酸・塩基と中和滴定


 

1.酸・塩基

 まず、pHを学ぶ。

 ☆

pH = -log[H+]
(底は10) 


 pHはドイツ語読みで”ペーハー”と読む。上記の赤枠で囲った[ ]はモル濃度を示している。つまり、1リットル中にどれくらい水素イオン(H+)が含まれているかと言う事。pHは水素イオン濃度の対数で底を10としてとる。
 水素イオン濃度を求めるまでは化学だが、その後は指数関数・対数関数の計算である。

1−1.水のイオン積

 実は水溶液における水素イオン濃度と水酸化物イオンの濃度を掛け算すると、濃度が一定ならば一定値になる。

 [H+][OH-] = 1.0 × 10-14 (mol2 / l2) (25℃)

 (mol2 / l2)を見て、”mol/l”を2乗して何になると言うわけではない。ただ単に”mol/l”を2回掛けたと言うだけである。
 イメージとしては水素イオンと水酸化物イオンは不死身である。積が一定と言う事は片方もしくは両方が0になると言う事はない。
 つまり、H+とOH-が不死身なら、中性と言うのはH+もOH-も無いと言うのはウソで必ず、H+、OH-は存在する。H+とOH-の勢力が同じ状態なだけである。従って双方等しい場合であるから[H+]と[OH-]は掛けて-14乗を山分けする訳であるから、-7乗ずつであることが分かる。

中性: [H+] = [OH-] = 1.0 × 10-7 (mol/l)

 従って、定義式に当てはめると・・・
 ∴ pH = -log10-77

 pHが7より大きいとアルカリ性。pHが7より小さいと酸性である。実際に色々な水溶液のpHを扱う事をイメージしておく。

 
 ex)
(1) 0.2mol/lの塩酸のpHを求めよ。ただし、log2 = 0.30とする。
(2) 0.3mol/lの水酸化ナトリウムのpHを求めよ。ただし、log3 = 0.48とする。
(3) 0.1mol/lのH2SO440mlと0.2mol/lのNaOH20mlを混ぜ合わせたときのpHを求める。
(4) 0.4mol/lの酢酸のpHを求めよ。ただし、電離定数 K = 1.8×10-5とする。
(5) 0.04mol/lの酢酸のpHを求めよ。ただし、電離定数 K = 1.8×10-5とする。
(6) 0.2mol/lのアンモニアのpHを求めよ。ただし、電離定数 K = 1.8×10-5とする。
(7) 0.1mol/lの酢酸70mlと0.2mol/lの水酸化ナトリウム20mlを混ぜ合わせた時のpHを求めよ。

 <解 説>
 (1)
 まず、0.1mol/lの塩酸を意識する。0.1mol/lというのが基準的な値である。
 0.1mol/lのpH = 1というのは常識的である。そこから、0.2mol/lのpHとどれだけズレているかが問題となってくる。

 HCl → H+ + Cl-

 塩酸は強酸であるから全部電離する。従ってH+の濃度は0.1。もうここでは上の式ですべて右辺に来ているのでもう、HClはいない。すべて右辺に来てH+が0.1、Cl-も0.1である。あとは、定義式に代入してみると下記のようになる。

 [H+] = 0.1 = 10-1 (mol/l)
 ∴ pH = -log10-1 1 ☆☆

 今回は0.2mol/lのHClのpHを求めるのだから、当然[H+] = 0.2である。
 
 0.2mol/lのHCl ([H+] = 0.2) → 0.1mol/lならpH = 1

 pHの掛け算はバカ正直にやるのではなく、だいたいの数をイメージしておくと計算がやりやすい。しかし、実際にはこれだけ値がズレている。そのズレを計算して、イメージした値からズレ分を足したり引いたり、掛けたりしていけばよい。
 0.1mol/lだといいのだけど・・・、実際は0.2mol/lで濃度は2倍である。
 
 C:2倍 → [H+]:2倍
 → pH:log2だけ異なる。
 pH = 1 - log2 = 0.70

 上記のCはConcentration(濃度)のCである。
 つまり、0.1の2倍の濃さ。塩酸は強酸なので、すべて電離する。従って、水素イオン濃度も0.1mol/lのときの2倍になる。つまり、0.1mol/lのときのpHとlog2だけ異なる。理由として、pHはlogの計算によるから。真数の足し算と言うのは対数の足し算と組み替えて考えられる。つまり、logAB = logA + logBでBを2に置き換えればよい。log2A = logA + log2のように元のAを2倍する場合であっても、log2を足す。だから、log2だけ異なるという事は+log2あるいは-log2だけの足し算、引き算になる。それが対数と真数の違いである。
 

 
 

 log2異なるといっても足すのか引くのか分からない。基準の1から見てlog2を引く。何故なら、それだけ濃度が濃いから。濃いという事は酸性がそれだけ強いので上記の数直線を左側に行かなくてはならない。

(2)
 もし、0.1mol/lの水酸化ナトリウムだったら・・・
 水酸化ナトリウムは1価の強酸なので全て電離して下記のようになる。
 
 NaOH → Na+ + OH-
 
 OH-が出てOH-の濃度が0.1だと考える事が出来る。
 
 [OH-] = 0.1 = 10-1(mol/l)
 
 [OH-]のままではpHは求められない。pHの定義からいうと[OH-]を[H+]に代入して求められる。そのためには、水のイオン積を用いる。水のイオン積はアルカリのpHを求める時に使う。
 [H+][OH-] = 1.0 × 10-14なので[OH-]=1.0 × 10-1はつまり、[H+] = 1.0 × 10-13となり、水のイオン積を引っくり返せばよい。従って、0.1mol/lの水酸化ナトリウムのpHは
 
 pH = -log10-1313
 
 しかし、いちいち上記のような事をやっていられない。ならば、0.1mol/lの塩酸、0.1mol/lの水酸化ナトリウムどちらも一価で強酸もしくは強塩基。ならば、0.1mol/l塩酸のpHは1だから対称性を考えて0.1mol/lの水酸化ナトリウムはpH = 13になる。今求めたpHは0.1mol/lの時のものであり、実際に求めたいpHは0.3mol/lのNaOHつまり濃度が3倍異なるという事はOH-の濃度が3倍異なる。
 
 C:3倍 → [OH-]:3倍
 → pH:log3だけ異なる。
 
 これは、(1)と同様に行う。
 OH-が3倍ならばH+は1/3倍になる。『ならばpHを1/3倍して・・・。』と、いう事をやる必要はない。この場合、値の狂った幅を見ていきたい。つまり、絶対値である。3倍になろうが1/3倍になろうが結局は3倍違うのである。足すか引くかは最後に決めればよい。1/3倍だろうと3倍だろうと結局はlog3狂うのである。+,−は分からなくてもこのように関連化する。
 0.1mol/lならばpH = 13なんだろうけど、いまは濃度が3倍違う。log3を足すのか引くのか?足すに決まっている。理由としては、濃度が濃くなるからアルカリが強くなるに決まっている。だから、値が大きくなる、というように+,−を決定するので+log3となる。
 
 ∴ pH = 13 + log3 = 13.48
 
 (3)
 ここでは、H+のモル数とOH-のモル数を求めてpHを求めるやり方と、一気にpHを求める2通りの解法を示す。
 H+のモル数はいくつ?
 
 0.1(mol/l)×40×10-3(l)×2(価)
 
 モル数を求める時にはml単位ではなく、l単位で表記する。lに10-3を掛けて40lの1000分の1の40mlという意味のl表記をする。『×2』は硫酸が2価の酸だからである。そして、OH-のモル数はH+のモル数と同様にして求める。
 
 H+:(0.1 × 40 × 10-3 × 2) = 8 × 10-3 (mol)
 OH-:(0.2 × 20 × 10-3 × 1) = 4 × 10-3 (mol)
 
 この2つを混ぜるという事はこの2つがバトルするという事である。そして、この2つがバトルするとH+が余る。
 よって、H+の濃度は
 
 [H+] = 4 × 10-3(mol) / 60 × 10-3(l) = 2/3 × 10-1 (mol / l)
 
 分母は酸と塩基がバトルして4 × 10-3と、討ち死ぬのだから4 × 10-3だけ残るので、分子は4 × 10-3で[OH-]はこの段階で全滅する。分母は体積を表しているので体積はtotalの体積60mlなので、60 × 10-3(l)である。それで、解は2/30なので、2/3 × 10-1 (mol / l) という事が分かる。2/3 × 10-1のように書き換えるのはpHはlogを使うのでlogの計算をやりやすいように変形しておく。変形したらあとは対数の計算なので下記のようになる。
 
 ∴ pH = -log(2/3 + 10-1) = 1 - log2 - (-log3) = 1.18
 
 今度は手っ取り早く求める方法。
 この方法はまず、酸とアルカリのどちらが勝つかを考える。NaOHを基準にすると、とても不利である。理由はNaOHは全滅するから。
 モル数は両方とも同じである。1と4、2と2でモル数は同じなのだが、ただ硫酸は2価なので2倍になるので硫酸が勝つ。まず、硫酸を基準にして考える。
 
 ※ H2SO4を基準

 pH = 1 - log2 = 0.70
 
 硫酸のpHはいくつ?0.7である。まず、0.1mol/lの塩酸の場合、pH=1.0である。硫酸は2価なので2倍になりlog2だけ基準のpH=1から狂うといったようにして導く。NaOHと混ぜてもH2SO4は生き残る。生き残った結果pH=0.7からどれくらい値が狂うかという事を見ていく。
 
 [H+] (mol / l)
 
 まず、分子のモル。
 H+は2倍ある事に気がつく事!つまり、モル数が同じでも硫酸は2価だから2倍でちょうど2:1になるという訳でH+はバトルによって半分死んでしまう。だから、モル数は半分に減ってしまう。
 そして、体積は元は40mlだが、いまは合計して60mlになったので、体積は3/2倍。結局、[H+]はmol/lにより求めるのだから、(1/2) / (3/2)なので1/3倍に減ったということである。従って、log3だけこの問題で基準としたpH = 0.7から狂うという事になる。
 
 [H+] : (1/2) / (3/2) = 1/3(倍) (← log3だけ異なる)
 
 この問題での基準はpH = 0.7だから、そこからlog3値がズレるので0.70にlog3を足すのか引くのか?酸が弱くなる、つまり中性に近付くのでpHの数値は大きくならなければならない。よって、0.70にlog3を足す。
 
 ∴ pH = 0.70 + log3 = 0.70 + 0.48 = 1.18
 
 (4)
 酢酸は弱酸であるから電離度は1ではない。だいたい100個のうち1個くらいが電離すると考えてよい。
 
 0.4mol/l CH3COOH
 電離定数 K = 1.8×10-5
 

CH3COOH

CH3COO-

+

H+

C(mol)

0

(0)

C(1-α)



 酢酸は一部電離するが、酢酸分子100個電離したら99個は戻ってくるので「」をつける。αは電離度である。電離度は反応が右へ行く割合のことである。強酸、強塩基は全部右へ行くので(電離度)α=1である。しかし、この場合はαの値は小さい。
 ベースの濃度C(mol/l)「濃度は0.4mol/lではないか」という人もいるが、一般的な公式を導き出したいのでCとする。
 弱酸、弱塩基は難しい、強酸、強塩基だと簡単である。弱酸、弱塩基はすべて上記の枠の中の事柄に当てはまる。
 H+の下の()は(0)となっている。これは「0でよいのだろう」と思われる人もいるだろうが、イオン積ではH+は不死身と述べているので、完全に0というのは都合が悪い。だから、(0)は0に近い値だけど、完全に0ではない。
 電離度αだからベースの濃度Cは電離するのでCH3COO- + H+は上記ではCαになる。C(1-α)は割合である。全体CからCαだけ電離するのでC - Cα = C(1 - α)ということである。この事柄は平衡定数で学ぶのだが平衡定数を知らなくても理解できる。

 K = [CH3COO-][H+] / [CH3COOH]
 = Cα×Cα / C(1-α)
 = Cα2 / 1-α ≒ Cα2

 上記の内の一番上の式の左辺が分母、右辺が分子と考える。まず、これは定義式なので書けるようになってもらいたい。電離定数Kの値が1.8×10-5を満たす。もちろん、今の状況Cα、Cα、C(1-α)を丁寧に代入する。
 近似値を使う!分母はほぼ1であるαはだいたい1/100くらい、つまり1%くらいである。たとえば、1万円持っていて100円落としたとしても、たいして気にはしないだろう。それとおなじで、1%失ってもほぼ1と考えてよい。
 結局、Kで始まって代入してCα2で終わるということは、Kの値はほぼCα2と考えてよい。
 つまり、
 K ≒ Cα2
 
 よって、αについて解く
 ∴ α = (K/C)1/2
 
 ちなみに電離度とは濃度によって変わる。濃度が薄くなると電離度は大きくなる。逆に濃くなると電離度は小さくなる。濃度が4倍になったら電離度は1/2倍である。つまり、Cが2倍になったらCを逆数にし、1/2乗するのだから電離度は1/2倍になる。
 弱酸の場合は、濃度によって電離度が刻々と変化している。これは公式だから覚えること。
 結局、pHはH+がほしいのでH+を求める。
 
 [H+] = Cα = (CK)1/2

 Cαはαに(K/C)1/2に代入することで(CK)1/2が求まる。これも公式である。

 ※ 0.1mol/lのCH3COOH
 
 0.1が基準なので0.1mol/lのCH3COOHだったらpH=2.87という値を各自のデータバンクに入れておく。
 
 [H+] = (CK)1/2 = (0.1×1.8×10-5)1/2
 = (18×10-7)1/2 = 3√2 × 10-7/2
 
 ∴ pH = -log(3√2 + 10-7/2) = 7/2 - log3 -1/2log2 = 2.87☆☆☆
 
 Cの値は0.1、Kの値は与えられている。これは位取りで(1.8×10-5)1/2は求まる。
 ここから先のpHを求める時までは対数関数の計算なので説明はしない。この値を知っているとセンター試験レベルの問題は容易に解ける。0.4mol/lが問題では与えられているのでCは4倍となる。
 
 0.4mol/l C:4倍  [H+]:2倍
 log2だけ異なる。
 
 pH = 2.87 - log2 = 2.57
 
 [H+]=(CK)1/2なのでCが4倍ならば、濃くなると電離度が下がるのでCを4倍にしても[H+]は4倍にはならない。実は√4倍すなわち、2倍になる。酢酸は濃くなるのだから酸が強くなる。よって、中性から遠ざかる。よって、log2を引く。
 
 (5)
 0.04mol/lのCH3COOH
 これは(4)の問題と濃度が10倍違うから、pHはlog10だけ異なる。普通10倍異なったらpHは1異なる。だが、酢酸は弱酸なので[H+]=(CK)1/2だからCが10倍ならば、[H+]=√10倍になる。(101/2)が掛かったら0.5( → log101/2 = 1/2log10 = 1/2)だけ異なる。薄くなるのだから中性にそれだけ近づくので+0.5をする。
 
 pH = 2.57 + 0.5 = 3.07
 
 (6)
 0.2mol/lのNH3
 K = 1.8 × 10-5
 
 水溶液において水は無視する。つまり、水溶液というのは水がタップリとある。だから濃度変化はないので水は省略する。そのため電離定数は頭デッカチになる。これがアンモニアの電離定数。(4)の酢酸の問題と同じようにの中へ代入して求めてもいいが、非常に煩わしい。
 酢酸の中で[H+]=(CK)1/2という事を導いたが、同じようにして導くといってもイチイチ導いていてもラチがあかないのでこの場で覚える。

 NH3 + H2O NH4+ + OH-
 
 ☆☆( K = [NH4+][OH-]/[NH3] )
  NH3 [OH-] = (CK)1/2
 
 酢酸と同じように(CK)1/2が登場する。アンモニアはアルカリ性なので同じ(CK)1/2でも[OH-] = (CK)1/2である。
 ※ 0.1mol/l の NH3
 
 0.1mol/lのNH3はpH=11.13である。この値も基準のデータとして覚えておくと良いのだが、これまでに学んだプロセスで考えていくことができる。
 0.1mol/lのCH3COOHのpH=2.87とデータバンクに入れたものがあるのでそこから、濃度が同じ電離度が同じという境界条件が与えられたとき何を考えるか?

 

 両者の間には酸とアルカリという決定的な違いがあるが強さは同じである。電離定数は電離度のことで、酸、アルカリの強さに関係がある。したがって、強さが同じであるならば下記のpH値の数直線を対称形に移動してよい。
 
 

   

 
 
 濃度が同じであるならば、当然中性からの距離が等しい。中性から0.1mol/lのCH3COOHの距離が4.13だから、0.1mol/lのNH3から中性までの距離も4.13と考えてよい。つまり、0.1mol/lのNH3ならば、pH=11.13である。しかし、今は0.2mol/lなのでCは2倍になり、[OH-]は√2倍である。
 
 0.2mol/l C:2倍 → [OH-]
 → pH:log√2だけ異なる。

 log√2=1/2log2≒0.15である。
 それだけ濃度が濃いのだからアルカリが強くなる。よって、中性から離れるので基準値から+0.15してあげればよい。
 
 ∴ pH = 11.13 + log√2 = 11.28

(7)
この2つをみて、酢酸の方が多いので酢酸が余るということを考える。もっと言うと、酢酸と水酸化ナトリウムの割合は7:4である。
 

 CH3COOH 7
 NaOH 
 相対的に酢酸が多いから酢酸が余る、ということを意識して欲しい!
 
 
  CH3COOH 3
 CH3COONa 4  ← 緩衝溶液:pHが変化しにくい
 
 この3:4が分かるだろうか?
 まず、7:4の『7』に注目すると、酢酸は7つあるから4つ中和しても3つ余る。だから、3:4ということになる。これは典型的なパターンである。酢酸と酢酸ナトリウムの組み合わせはpH値の変化が起こりにくいので緩衝溶液と呼ばれる。
 緩衝とは衝撃を和らげること。酸・塩基において衝撃とはpH値の変化の事である。つまり、酸やアルカリを加えてもpHが変化しにくい、英語で言うところのbufferである。このことを知らないと後々困ることになる。酵素反応や至適pHが決まっているから代謝産物でラジカルに変化してしまっては非常にマズイ。だから、pHはあらかじめ緩衝溶液を加えて実験を行う。
 まず、基礎理論について解説しておく。
 酢酸と酢酸ナトリウムは酢酸と酢酸イオンがほぼ同値か否かに掛かっている。
 
 

 

CH3COOH

CH3COOH

CH3COONa

CH3COO-


 化学のよくできる人は酢酸は酢酸ではないか!と思う。酢酸ナトリウムは非常に電離しやすいので酢酸イオンが大量に出てくる。酢酸は電離しにくい上に既に酢酸イオンがダブついているのでこの状況では電離して出てくることはできない。だから、酢酸は非常におとなしい。この場合の、酢酸イオンは全て酢酸ナトリウムから供給されている。だから、この組み合わせは正しい。
 
 CH3COOH + OH-CH3COO- + H2O
 CH3COO- + H+CH3COOH

 酢酸と酢酸ナトリウムなのだが酢酸と酢酸イオンである。(∵ 同値である)
 酸やアルカリを加える。H+やOH-は外から加えた酸やアルカリである。これらは野放しにしておくとラジカルにpHが動いてしまうので、加えられた瞬間にこれらを喰ってしまえばよい。もっと言うと、緩衝溶液はそれこそ山のように種類があって年中試験問題に登場する有名人。確かめるためにはH+やOH-を喰らうことにより、ちょうど入れ替わることを意識するとこれは緩衝溶液ではないかということを見抜くことができる。
 確かに、pHは変化しにくい、しかし、pHを求めることは簡単なのだ。
 

[H+] =

[CH3COOH / CH3COO-] × K


 これは一体何か?
 電離定数を[H+]について解いてみた。pHを求めるのだからH+が分かればよい。そしてこの式へ代入する。
 酢酸ナトリウムと酢酸。具体的に求めて代入するが、最終的には割るのでいっそのことこの段階で割ってしまおう。求めるのはアクマでも比率である。
 緩衝溶液は薄めても変わらない。例えば、10倍に薄めても[CH3COOH / CH3COO-]の分子・分母が1/10倍ずつになるので[H+]は変わらない。だから、緩衝溶液は変わらない。つまり、緩衝溶液とは比率でよい。
 では、その基準は何だろうか?1:1である。
 濃度は特に関係ない。むしろ比率である。つまり、1:1の時が基準であり、この時[H+]とKが等しくなる。
 
 [H+] = K = 1.8 × 10-5
 
 つまり、pHはKの値を代入して計算する。
 
 pH = 4.74☆☆
 
 今回の場合は3:4だから、1:1からはズレている。つまり、ズレを計算すれば求まる。
 つまり、log4/3だけpHがズレる。なぜ、3/4では多いのか?
 3/4だったら真数が1より小さい。真数は1より大きく設定する。
 
 log4/3 = 0.12だけ異なる。
 pHは0.12を足すの?引くの?という事では、アルカリの方が多いから足すのである。
 
 pH = 4.74 + 0.12 =4.86
 
 鉄則
 ・水のイオン積はアルカリのpHを求めるときに使う。
 ・水溶液において水の存在は無視する。

 

− コラム −


 pHというと、中和滴定や酸・塩基の問題を解くときにしか使わないイメージを持つ人が多いが、実は我々の体を流れる血液にもpH値は存在する。
 我々人間の血液のpHは約7.4の弱アルカリである。血液のpHは7.1〜7.7の間が正常値とされているが、実際にはこれほどの値の幅はなく約7.4前後(=7.40±0.05)に保たれている。
 入院している人の血液のpHは通常よりも少しだけ低い約7.352あたりの値を示す、と言われている。これは肺機能が低下しているために血液中に少し二酸化炭素がたまり気味で酸性に偏るためである。つまり、血液のpHは主として呼吸機能と腎機能にて調整されているのだ。
 逆に過喚起症候群の時などには、血液中の二酸化炭素が足りなくなってアルカリに偏ってしまうので血液のpHは7.52くらいになる。過喚起症候群などは、動脈から採血して血中二酸化炭素濃度が著しく低下していることから判明する。
 このように、pHは我々の生体の恒常性維持に欠かせないものである。
 
 2.中和滴定    
 
 (1)ホールピペット
 (2)メスフラスコ
 (3)ビュレット
 (4)コニカルビーカー(三角フラスコ)

コニカルビーカーは三角フラスコで代用されることが多い。まずは、表舞台のスターではなく、裏方さんのおはなし。
ホールピペットとメスフラスコ
例えば、ホールピペットなら10mlとか、メスフラスコなら200mlとか容量が決まっていて線が1本引かれている。


 つまり、どんな体積でも計れるのではなく、「これは200ml用」といったように、既に計れる体積が決まっている。メスフラスコのラインまで注ぎ入れるとちょうど200mlとなり、このラインを標線という。
 例えば、ホールピペットは標線が非常に細いところに引いてある。ホールピペットは口で試料を標線の所まで吸って使うのだが、細いところに標線が引いてある理由は微妙な体積の差がわかりやすくするため。
 メスフラスコは試料を薄めるというイメージを持っていると非常に理解しやすい。例えば、酢酸を10ml取ってきて水を加えて200mlまで薄めるときに使う。
 次に表舞台のビュレットとコニカルビーカー。
 


 ここでは、ビュレットが主役である。ビュレットにはコックがついていて調節役になっている。上から試料を垂らしていく。垂らしているだけではダメで、受け皿がなくてはならない。この受け皿の役割を担うのがコニカルビーカーである。
 例えば、コニカルビーカーに酸を入れて上からアルカリを垂らしてキッチリ中和した。その体積から濃度を逆算すると言ったことを行う。
 『コニカル』(= conical)とは英語で『円錐形の』と言う意味である。滴定では正式にはコニカルビーカーを使うのだが、入試では三角フラスコで代用している場合が多い。特に、入試では滴定実験の器具の準備が聞かれる。
 
 2−1.準備    

 (1)、(3) → 中に入れる溶液で濯ぐ
 (2)、(4) → 水で漱ぐ
  濡れたまま

 水と言っても水道水ではなく、蒸留水である。意識しておくのは濡れたままで使うと言うことである。器具が乾いていると溶液がへばりついてそこで水分を失ってこびりついてしまうことがある。だから、絶対に乾いた状態で使うことはない。
 ホールピペットを水で漱いだらマズイ。水で漱いだら溶液が薄くなり体積だけ要求に即している状態なのでモル数が狂ってしまう。従ってホールピペットやメスシリンダーは中に入れる溶液で漱ぐ。
 コニカルビーカーの中にはホールピペットで取った試料を正確なモル数で入れる。つまり、外から正確なモル数入れるのに器具を溶液で漱いだらよけいなモル数が入ってしまうので水で漱ぐ。
 
 2−2.滴定曲線    
 
 (1)HCl(強酸)NaOH(強塩基)  基準
 



 滴定曲線は幾種類かあるが、基準は上記に示すタイプである。pH=7が中性であるからグラフを上に行くとpHが7よりも大きいからアルカリ性。グラフを下にいくとpHが7よりも小さいから酸性ということが分かる。当量点というのはちょうどピッタリ中和したらジャスト中性である。強酸と強塩基の特徴を考えること!

当量点付近におけるpHの変化が非常に大きい

 A、Bともに使用できる。☆☆

 上から一滴、一滴と滴下しているわけだが、無論この一滴にも体積がある。いよいよ中和という最終段階であと一滴もいらないという状況でその一滴が入ってしまう。塩酸は元々強いので、余計に入ったためにpHがラジカルに変化してしまう。一般に当量点付近ではpHは大きく変化するが、強酸・強塩基の場合にはpHの変化具合は並ではない。指示薬Aのフェノールフタレイン溶液では斜線帯よりも上では赤色呈色なのである。つまり、アルカリが赤、斜線帯よりも下、つまり酸性側に行くと無色なのである。変色域を一気に突破するから最後の一滴で無色から赤に変わる。色が変わらないと中和したと分からないから、永遠に加えていってしまう。だから、フェノールフタレイン溶液は中和滴定には必要なのである。
 メチルオレンジは斜線帯よりも下が赤で上が黄色である。メチルオレンジを使った場合でも、それまで赤だったのが最後の一滴で黄色になる。このようにpHの変化がラジカルだから変色域を一気に突破する。したがってA:フェノールフタレインもB:メチルオレンジも両方とも中和滴定に使う。
 
 ・ 指示薬    
 

 
 A:フェノールフタレイン   無色 [変色域:8.3〜10.0]   赤色 
 B:メチルオレンジ  赤色 [変色域:3.1〜4.4]   黄色 



 指示薬とは自分の色が変化することによってちょうど中和したことを教える訳なので最後の一滴で色がパッと変わると言うことは、この中和滴定に使えると言うことである。
 
 (2)CH3COOH(弱酸)NaOH(強塩基)

 

※ Aのみ使用できる。☆☆

 酢酸は弱くて水酸化ナトリウムは強い。だから、全体的にアルカリに傾いてしまう。よって、中和しても中性にならずアルカリ性である。このグラフは(1)のグラフを全体的に上方に押しつぶしたような形となっていると考えた方がよい。
 すると、A:フェノールフタレイン溶液は使えるのだが、指示薬B:メチルオレンジは使えなくなる。メチルオレンジの変色域からはずれてしまっているのである。A:フェノールフタレインの方は最後の一滴でパッと色が変わるが、B:メチルオレンジは変色域からはずれているので使えない。
 上記の滴定曲線を黄色でなぞった部分を入試では必ず聞いてくる。そのためにわざわざ、※☆☆をつけた。
 この場合、完全に中和したら酢酸ナトリウムになる。つまり、当量点にまで達したら酢酸ナトリウムになるということである。上記の滴定曲線を黄色でなぞった部分は中和する途中過程であるから酢酸ナトリウムがいるが、まだまだたくさん酢酸が余っている。つまり、緩衝溶液である。入試で、黄色の部分のpHの変化が小さい理由を問われたら、即座に『緩衝溶液の状態だから』と答える。

☆☆ →  CH3COOH
CH3COONa
→  緩衝溶液

 『緩衝溶液』と言うだけで把握できる人もいるだろうが、入試では「反応式も示して答えよ」という問題もあるから反応式も示す。

(反応式)
CH3COOH + OH- → CH3COO- + H2O

 緩衝溶液ではH+やOH-を喰らってしまえばよい。そのまま放置すると前半でpHが大きく動いてしまう。
 この実験では水酸化ナトリウムを加えているのだから、アルカリ(OH-)を加えている方だけを引っ張ってくれば反応式を示したことになる。こういう訳でOH-がまず、吸収されてpHの変化が少ない。

 (3)NH3HCl

 → B:メチルオレンジのみ使用できる。
 
 アンモニアは弱塩基、塩酸は強酸なので全体的に酸性に傾く。(1)のグラフを下に押しつぶしたような形の滴定曲線が描かれ、当量点はpH=7を下回るということで、指示薬はB:メチルオレンジだけ使える。これは(2)の逆パターンである。

     鉄則  
 当量点付近ではpHの変化が大きい。
 
 


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