アルミニウムについて


 1. 精練

 アルミにかぎらず、無機化学で金属を扱うときには精錬は避けては通れない項目となる。
 精錬では、主に2つのことを行う。

 ・ 錆を落とす
 鉱石から目的の金属を得ることが出来ても錆だらけでは意味がない。

 ・ 不純物の除去
 鉱石から目的の金属を得ることが出来ても不純物だらけでは意味がないということ。

 この2つは、全く違うモノであるので『錆をとる』、『不純物を取る』のうちどちらに重点を置くかを意識しないと意味が無くなってしまう。
 今回は、アルミについて解説していくが、アルミの場合はどちらも非常に重要となっていることを意識して欲しい。

 1) 不純物の除去

 アルミの鉱石はボーキサイトというのは非常に有名な事実となっている。ボーキサイト中にはアルミが含有されているが、錆びた状態である。アルミは錆びやすいので当たり前である。

 (反応式)
  
Al2O3 + 2NaOH

2NaAlO2 + H2O
ボーキサイト 両性元素
Fe,Tiは除去

 まず、アルミから不純物を除去したい。そのためにアルカリを加える。この過程で不純物が除去されると理解できるだろうか?
 アルミというのは両性元素つまり、酸化物は両性酸化物なので酸・塩基どちらにも溶ける。当然ながら鉄(Fe)とかチタン(Ti)等がボーキサイトには含まれていてこの段階で除去される。先程も述べたように、ボーキサイト中のアルミは当然の如く錆びている。
 通常、金属の錆は酸で洗い流したりする。これは錆びた10円玉をレモンで磨くと錆が落ちて新品の如くピカピカになることに通じる。金属の錆は酸で溶かす方法はこの場合、不純物も一緒になって溶けだしてしまって不純物が分離できないので意味がない。そこで、アルミは両性なので酸にも溶けるがアルカリにも溶けるという特性を利用する。普通の金属はアルカリには溶けない。だから、上記の反応式ではアルミが溶けることにより不純物と分離する事ができる。この反応で、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2)が登場する。この段階で既に除去されているのでアルミから不純物を抜き出すのは以外にもアッサリとしている。

 2) 錆を取る

 (反応式)

 
2NaAlO2 + H2O

Al(OH)3↓ + NaOH

加水分解

 錆を取る!
 そのためには、まず下拵えをしておく。上記の反応式の左辺がそれである。
 まず、加水分解という反応名は極めていい加減なものという事を意識する。加水分解というのは、水を加えて2つ以上の物質が出てくれば全て加水分解とよぶ。まさに読んで字の如くと言うことだ。加水分解自体は有機化学で頻繁に登場するが、無機化学でもこのように応用される。だから、加水分解ほどいい加減な概念はないということを意識しておくこと!

 (反応式) 

 Al(OH)3 + OH- → AlO2- + H2O *

 

 上記の加水分解の登場する式はあまり意味がない。*のついた式は、”沈殿”で登場する非常に有名な反応式である。
 アルミは、アルカリに対し一旦は水酸化アルミの沈殿を作るが、過剰にアルカリを加えることにより溶けると言うことである。これは、一種の根本となる知識で要は根本的な知識にどうリンクさせるかが重要。
 まず、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2)に水を加えると言うことはアルカリが薄くなると言うことである。アルカリが薄くなると言うことはアルカリを加える前に戻ると言うこと、つまり、*のついた式の逆だということである。

 (反応式)

 

Al(OH)3

Al2O3 + 3H2O

強熱
アルミナ

 この反応が普通の反応だと思ってはいけない。基本はアルカリを加えたらアルミは溶けだして、水を加えたらアルカリを加える前に戻るということ。つまり、*のついた式の逆だと考えなければ訳が分からなくなる。
 当然、水を加えればアルカリを加える前に戻り、沈殿を確認することが出来る。この沈殿をフライパンで焼くようなマネをするというわけ。
 上記の式では強熱と書いた。アルミはイオン化傾向が大きいから水酸化物が安定であるので強力に加熱しないといけない。

 

 これが、イオン化傾向が小さい銅になると酸化物の方が安定になるので、少し加熱するだけで酸化銅が沈殿する。銀に至ってはもっとイオン化傾向が小さいので、加熱しなくても酸化銀が沈殿する。
 このようにしてAl2O3が得られた。化学式を見るかぎり最初のボーキサイト(Al2O3)と変わっていないではないか!と、思う人もいるだろうが不純物が除去されているところが大きく変わっている。
 このAl2O3は酸化アルミニウムだが、工業的にはアルミナと呼ぶ。

 2. Al2O3の融解電解

 アルミニウムはイオン化傾向が大きい。だから、水溶液を電気分解しても水素ばかり発生してしまう。従って、水があってはならない。これはナトリウムと同じである。だから、融解電解を行う。この時、必ず氷晶石を加える。

 氷晶石(Na3AlF6)を加える
 (融点 2000℃ → 900℃)

 氷晶石の化学式は覚えた方がいいのだが、実際の入試で聞いてくるのは名前のみである。
 何のために氷晶石を加えるのか?
 もちろん、融点を下げるためである。アルミナの融点は約2000℃(正確には2050℃)もある。これは生半可な温度ではない。例えば、鉄の溶鉱炉でアルミナを溶かそうとしても先に溶鉱炉の方が溶けてしまう。それくらいすさまじい高温であると言うこと。
 そのようなことではコストがかかりすぎて工業的に成立しない。だから、氷晶石を加えて融点を900℃くらいまで下げてあげる。すると、普通に溶解電解ができる。
 アルミナの融解電解は入試ではほとんど出題されないが、珍しいので紹介しておく。

(−)
 Al3+ + 3e- → Al

 C + O2- → CO + 2e-

 C + 2O2- → CO2 + 4e-

(+)

 アルミが(ー)極、あれ?なぜアルミが下にあるのか?固体ではないのか?
 この時アルミは液体となっている。アルミの融点が700℃(正確には660.24℃)くらいにある。だから、900℃で溶けて液体の状態になり下に沈んでくる(水銀法と似ている)。そして上から炭素電極を突っ込む。これで電気分解をする。
 1970年代までは、アルミナの精錬は静岡県の清水市が有名で、原料のボーキサイトは日本ではとれないので海外(=オーストラリア)から輸入していた。だから、港町で作ってしまおうということになるのだが、アルミニウムの精錬では福島県の山奥にある喜多方が有名だった。喜多方には只見川が流れていて上流には水力発電書がたくさんある。つまり、アルミというのは非常に電力を必要とするのだ。よくリサイクルで『アルミニウムは電気の缶詰めだ』とも言われる。勿論、アルミニウムに電極をさしたら電気が出てくると言うわけではない。
 つまり、アルミとは大量に電力を必要とするのだ。そのため、電力が大量に供給できるところに持っていって凄まじいばかりの電気分解をしてアルミを得ていた。
 アルミと言うのは非常に電気を消費し、凄まじい電気分解をする。通常では考えがたい反応がここでは起こることを意識してほしい。アルミの電気分解が当たり前だと考えるのは非常に危険なことになる。この場合だけと言う点がいくつかあるのでその点を意識する。
 (−)の半反応式を見ると、水が存在しないので順調にアルミが出る。陰極からは金属が出てくると把握する。
 (+)は半反応式を2つ書いておく。一酸化炭素の場合と二酸化炭素が出る場合がある。通常はCOと考えてかまわない。炭素電極は普通は安定である。しかし、非常に強烈な電気分解なので、この場合だけは電極が溶けてしまう。
 O2-は普通は存在できない。
 この場合は電圧が高く温度も高いので酸化物イオン(O2-)が存在する。何度も書くが O2-は普段、不用意に書いてはならない!!
 例えば水溶液の問題で酸化物イオン(O2-)を答案に書いてしまったら”そんなものが存在するわけがない!”と、×をつけられてしまうこと必至である。この場合は非常に特殊な場合なのである。
 
 ・唯一、炭素電極が解ける
 ・唯一、酸化物イオンが登場する
 
   鉄則

  ・ 加水分解ほどいいかげんな概念はない
  ・ アルミの融解電解のときだけ炭素電極が解ける。
  ・ O2-は普段、不用意に書いてはならない!  


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