アスピリンについて


1. 何から出来ているか?

 アスピリンはドイツのバイエルン社の製品名で化学的にはアセチルサリチル酸という。アセチルサリチル酸はシロヤナギなどの植物に含まれています。
 では、何から出来ているか、と考えてみよう。
 頭の回転の速い人ならば、すでに分かっているように名前から容易に推測することが出来るだろう。 
 

[名前から推測する]
 

 アセチルサリチル酸 → アセチル + サリチル酸
アセチル化したサリチル酸 
 

 推測どうり、アセチルサリチル酸とはアセチル酸に酢酸付加(=アセチル化)したものなのです。つまり、サリチル酸から出来ているのだ。
 よく、大学入試などで「アセチルサリチル酸を作る段階の化学式を記せ」と出題されることがある。そのようなときは、下記のように記せばよいだろう。

 [反応式]

 

 サリチル酸にアセチレンを付けたい。ただ、この反応では水が取れてしまうので、水不足の無水酢酸を使った方が効率がよくなる。

2. アセチル化

 酢酸を反応させるので、普通の酢酸を使ってもアセチルサリチル酸を使ってもいいのだが、普通の酢酸を使うと脱水反応をしてしまいます。無水酢酸を使えば脱水反応を起こさないので、効率のよい無水酢酸を使うのがbetterということになる。
 無水酢酸は、元々酢酸2分子から出来ている。酢酸2つペアでやってくるのだが、サリチル酸と結合するのは1つだけ。残り1つは遠慮深く残る(この反応はアセチル化)。

 青い枠はアミノ基、赤い枠はカルボン酸と分かる。この2つのアミノ酸は脱水結合する。水が取れるときにはカルボン酸の方からOHが取れる。
 アミノ基には酸素原子が含まれていないのでカルボン酸からOHが取れるのは当たり前と考える。
 この式を見れば、エステル結合で酸素はカルボン酸から出すのか、アルコールから出すのかということを忘れてしまった場合、カルボン酸からOHが出るということは一目瞭然に分かるはず。
 緑の枠はいわゆるアミドの生成。生物の分野でペプチド結合を学んだ者もいると思うが、つまりタンパク質はすべてこのようなアミノ酸の結合をする。
 緑の枠の中をアミド結合(別名:ペプチド結合)という。タンパク質ならばアミドペプチド結合といった方がよいが、一般にはアミド結合と呼んでいる。

 ペプチド結合 ・・・ アミノ酸2分子または、それ以上がアミノ基の−Hとカルボキシル基の−OHとが、水として離脱して結合することをいう。

 [アセチル化の代表例]

 アセチルサリチル酸はアセチル化という反応をしている。
 原料としてアセチル化は無水酢酸と関係がある。とくに無水酢酸に絡んで酢酸が脱水結合するときには反応名としてアセチル化が優先する。
 この反応で前半にエステル結合をするのでエステル化ともいえるが、無水酢酸を使うので結局、アセチル化という名前が優先する。
  だから、アセトアニリドもアセチルサリチル酸もnamigがアセチル化と言うことで一致する。

 

 鉄則 : 水の酸素は酸性の酸素から取れる
      無水酢酸が使用されていたらアセチル化を警戒する。

 3.アスピリンの性質

 解熱鎮痛剤というとアスピリン、他にはアンチピリン、アミノピリン、キニーネなどがある。臨床的には熱が出た患者などにアスピリンを処方する。
 発熱したときに、アスピリンを服用すると熱が下がる。では、必要以上に服用したり、正常時に服用したらどうなるだろうか?
 熱がどんどん下がり、終いには0℃になってしまう・・・ということはありえない。
 アスピリンは、血液を凝固しにくくする効果があるので、出血したときなかなか止血できなくなる。

 3−1.痛みを和らげるメカニズム

 痛みや発熱、炎症が起こるプロセスとして“プロスタグランジン”という物質が関係していることが既にわかっている。この物質は身体の中で作られる一種のホルモンで、血管を拡張させたり、発熱・炎症、子宮の収縮など多彩な働きを持っている。
 プロスタグランジンは、傷を受けたりしたときなど、身体に何らかの刺激が加わると、酵素の作用で“アラキドン酸”という物質が変化して生成される。そして、痛みを強めたり、血管を拡張して炎症を引き起こす。また、プロスタグランジンが脳の視床下部にある体温調節中枢に作用することにより、体温が上昇する。

 [プロスタラグジンの合成過程]

リン脂質            
 ↓ホスホリパーゼA2の作用  
アラキドン酸            
↓シクロオキシゲナーゼの作用
プロスタグランジンG2          
↓             
プロスタランジンI2、トロンボキサンA2
 

 アセチルサリチル酸は、酵素の働きを阻害することでプロスタグランジンの合成を抑制する作用を持っている。そのために、痛みや炎症、発熱が抑えられる。

 4.アスピリンの新たな用途

 アスピリンは、プロスタグランジン合成を阻害する働きを持っているので、従来は解熱鎮痛剤として使われていた。現在では、実際の医療現場ではこうした目的に使われることは少なく、代わって抗血小板作用が注目を集めている。 
 解熱鎮痛剤として用いられていた服用量よりも、はるかに少ない投与量において抗血小板作用が顕著に起こるため、虚血性心疾患の予防効果が期待されている。この少量投与法については、最近始まったものではなく、既に10年くらい前には海外で大規模な試験が行なわれ、その後日本でも取り入れられるようになってきたという経緯がある。現在では多くの方が、この治療法を受けている。
 この現象は、上記の”プロスタラグジンの合成過程”で登場する。プロスタグランジンI2とトロンボキサンA2の役割が大きい。
 プロスタグランジンI2(別名:プロスタサイクリン)というのは、主に血管内皮細胞で生成され、血管を広げたり血を固まりにくくして、血液の循環を良くする効果がある。それに対し、トロンボキサンA2は主に血小板で生成され、血管を収縮するとともに血を固まり易くする効果がある。このことから、、同じアラキドン酸でもシクロオキシゲナーゼの作用により、循環器系にお互いに相反する作用を及ぼしてしまう。
 つまり、血栓をできにくくしても、血管の収縮や凝血作用をも抑制してしまうので、血小板凝集抑制作用は起こりにくくなってしまう。これを一般的に「アスピリンジレンマ」と呼んでいる。
 「アスピリンジレンマ」は虚血性心疾患の予防効果が期待されるからと言っても決して無視する事は出来ない。アスピリンに抗血小板作用があることは、既にわかっていたことなのだが、この療法が注目されるようになったのは、アメリカ医師会会員22071人を対象として行われた大規模な研究(Physicians Heaith Study)の報告がなされたことが大きい。
 この研究では、アスピリン325mgを一日おきに投与する群とプラセボ群を用いて、二重盲検試により5年にわたって追跡調査した結果、心筋梗塞発症の危険が、アスピリン投与群の方がで44%低下したとの結果が出たのだ。
 二重盲検試験で、アスピリン少量投与群側では心筋梗塞発症を予防する効果が出たわけだが、その他にもアスピリン少量投与群では皮下出血や鼻出血などの頻度が32%大きく、輸血が必要とされたものの頻度も71%高いという結果が出ている。こうなると、1日おきにたかだか0.3gのアスピリンを服用するだけでも、抗血小板作用があらわれることは、まず間違いない。


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