沈殿と錯イオン


1.S2-(硫化物イオン)

 これは硫化物イオンである。硫化物イオンを安定させるためにはどうすればいいか?
 硫化水素を水に通せばよい。

(反応式)
 H2S 2H+ + S2-

 硫化水素には2価の弱酸のイメージがある。たしかに・・・硫化物イオンが出てくる。硫化物イオンが金属イオンとくっついて沈殿を作る。
 たとえば銅イオンとくっついたのなら・・・

 Cu2+ + S2- → CuS ↓(黒) 硫化銅(II)

というように、沈殿する。
 沈殿の式を作るpointは電荷がゼロになればよい。電荷があったらイオンになって水に溶けてしまう。水に溶けにくいから沈殿が起こると言うことを認識しておこう!
 よって、銅イオンと硫化物イオンとの沈殿は硫化銅(II)の黒色沈殿である。
 銅は2+(Cu2+)硫黄は2-(S2-)だから1:1でくっついてCuSとなる。
 硫化物の沈殿は酸性の時とアルカリ性の時とでは話が違ってくる。

☆ 酸性のとき [H+](大)
 → 左へ移動 → [S2-](小)
 → 沈殿しにくい

 酸性といえば、水素イオンである。[]の記号は濃度をあらわす。酸性といえば、H+が存在する。つまり、水素イオン濃度が高い状況なのでH+がたくさんいる状態。それでは、少しH+を減らそうというように反応が進む。このロジックで反応が左辺側へと進む。全体的に反応がひだりへすすむ(「←」)。そうすると困るのが硫化物イオン。
 硫化物イオンは何も悪いことをしていないのに、反応が左へと進むので数が減ってしまう。つまり、硫化物イオン濃度が低下する。硫化物イオンの数が少ないので沈殿しづらくなる。なぜなら、相手の数が減っているから沈殿しづらい。
 つまり、相手の数がゼロならば沈殿しない。
 だから、相手の数が少ないということは非常に沈殿を作りづらい状況にあるということだ。

☆ 塩基性のとき [H+](小)
 → 右へ移動 → [S2-](大)
 → 沈殿しやすい

 これは酸性の逆。酸性の時はH+がたくさんいたが、こんどは逆にH+が少ない。H+が少ないからその分を補ってあげようと反応が起こるので、反応は右辺へと進む(「→」)。反応が右に移動すると、今度は硫化物イオンは何もしないのに数が増えた。従って、金属イオン(Cu2+)とくっつく相手(S2-)がたくさんいるから沈殿を作りやすい。
 沈殿の世界では、水酸化物イオン(OH-)が一番majorで、硫化物イオン(S2-)は2番目にmajor。これにて、水酸化物イオンと硫化物イオンとの組み合わせで沈殿を学ぶのは終了。

● 酸性で沈殿

 酸性というのは元来沈殿しにくい。でも、不利な状況を押しのけて沈殿することがある。

 イオン化傾向Sn以下  

 由緒正しきイオン化傾向。
 悪条件下で沈殿が起こるということは水に溶けにくいということ。つまり、イオン化傾向が小さいということ。ちなみに、イオン化傾向が大きければ水に溶けやすく、錆びやすい。
 酸性で沈殿すると言うことは、その金属はイオン化傾向の小さいグループに属するはずである、と容易に想像できる。
 沈殿するモノにはイオン化傾向の小さなモノが多い。
 ex) 硫化銅(CuS)、硫化銀(Ag2S)、硫化鉛(PbS)

CuS(Ag2S、PbS)

 なぜ、CuSだけ色が違うのか?
 それは、一番最初に例として登場しているから。なぜ、Ag2S、PbSが()に入れてあるのか?
 理由は金属イオンの分析の時に塩酸(塩化物イオン)を加える。その溶液の中に銀や鉛のイオンが存在したらいきなり沈殿する。その次に硫化水素を通じる。
 つまり、硫化水素を通じる頃には銀や鉛のイオンはその溶液中には存在しない。現実問題として、Ag2SやPbSを考慮に入れることは野暮ってものである。
 硫化物の沈殿といえば99.9%硫化銅の沈殿と考えてよい。

● 塩基性のみ沈殿

 硫化物の沈殿で入試でよく出題されるモノはそれほど多くはない。塩基性のみ沈殿という事は条件がよくなれば沈殿ができるということ。

 イオン化傾向 Zn〜Ni  

 イオン化傾向Zn〜Niということはかなりイオン化傾向が大きい。このことは、イオン化傾向が大きいから水に溶けやすいと言うこと。

ZnS、FeS、(MnS)

● 沈殿しない  イオン化傾向 Al以上

 これはイオン化傾向が非常に大きいので水に溶けやすい。だから、いくら条件をよくしても沈殿しない。
 いままでに、硫化物の沈殿で色をほとんど提示していない。実は、硫化物の沈殿というのは「黒人社会」でほとんどが黒色沈殿。
 『黒色沈殿』といったら、硫化物の沈殿をまずは疑ってみよう!
 ・・・勿論、例外もしっかり押さえておこう。

 ☆ 硫化物はほとんど黒

ZnS(白)、CdS(黄)MnS(淡紅) ☆☆☆

 ZnS(硫化亜鉛)これは白色である。周囲が黒色であるにもかかわらず、1人だけ白色だと言うことは非常に重要だと考えられる。
 CdS(硫化カドミウム)これは黄色である。Cdとはカドミウムのことでけっしてコンパクトディスクのことではない。ちなみに、カドミウムはカドミウムイエローとして油絵の絵の具としてpopularに使われている。
 カドミウムは非常にminorであるので、硫化カドミウムが黄色だと言うことを学んだらカドミウムの勉強は終わり。
 MnS物質名を硫化マンガンという。この色は淡紅色だが、参考書などには「肉色」といった記載がされていることがある。肉色と言っても、新鮮な肉、三日経過した肉、鶏肉、豚肉、牛肉など色々あってすべて色が違う。明治時代に人間がMnSの色を見て肉色と判断しただけであって、一般的にはピンク色と呼ばれる事に留意して頂きたい。
 次の項目は、ちょっと変わったイオンのお話。

 ーコラムー

 カドミウムの起こした公害業は何か?
 それは、イタイイタイ病である。
 なぜ、『イタイイタイ病』というのか?
 それは、カドミウムが体内に取り込まれると腎細管を破壊し、カルシウムの再吸収ができなくなってカルシウムを補う方法が他にないので骨を溶かし出す。そのため、骨が異常に弱くなり骨折しやすく、患者が「痛い痛い」といって栄養不良などで亡くなるからである。

 鉄則

 ・沈殿の式を作るポイントは電化がゼロになればよい
 ・硫化物の沈殿は酸性の時とアルカリ性の時では噺が違ってくる
 ・硫化物の沈殿は『黒人社会』である  
 

2.CrO42-  (クロム酸イオン)(黄)

 クロム酸イオンは黄色をしている。だから、クロム酸と言ったら黄色いというイメージを持つように心掛けよう!
 クロム酸イオンの試薬といえばクロム酸カリウム(K2CrO4)である。クロム酸カリウムは何色かと聞かれたら、K2CrO4 → 2K+ + CrO42-というように電離してクロム酸イオンを出すので黄色である。

 K2CrO4(クロム酸カリウム:黄色)

 なぜ、クロム酸カリウムの例を出したかというと、以前に『株式会社酸化還元』のはなしで二クロム酸カリウムを学んだ。実は、クロム酸カリウムはニクロム酸カリウムと親戚関係にある。だから、沈殿がどうこう言う以前に非常に大切な式がひとつある。

 Cr2O72-(橙黄色) 酸性で安定

 二クロム酸イオンは何色かというとオレンジ色である。
 二クロム酸カリウムというのは過マンガン酸カリウムと同じように硫酸を伴走者として安定する。
 つまり、酸性で安定する。では、アルカリを加えたらどうなるのか?

 Cr2O72- + 2OH- → 2Cr2O42- + H2O

 塩基性で安定☆☆☆

 酸性で安定なモノにアルカリを加えたら不安定に決まっている。
 二クロム酸イオンはクロム酸と親戚関係であって酸性の二クロム酸イオンをアルカリにすると不安定な状態になって反応し、クロム酸イオンになり黄色を呈する。
 クロム酸イオンは塩基性で安定。当然、黄色いクロム酸イオンに硫酸を加えると橙黄色のニクロム酸イオンに戻ってしまう。
 (Cr2O42- + 2H+ → Cr2O72- + H2O)

 2Ag+ + CrO42-Ag2CrO4 ↓(赤褐色)☆☆
 PB2+ + CrO42-PbCrO4 ↓(黄色)
 Ba2+ + CrO42-BaCrO4 ↓(淡黄色)

 ここら辺は一応minorなのだが、第1志望レベルの大学ではmajorと考えて良い。ゴチャゴチャしてわかりにくいという箇所で上記の式が意外な突破口となる。物質名は上からクロム酸銀、クロム酸鉛、クロム酸バリウムである。
 沈殿の色はbaseとなるクロム酸が黄色であるのでクロム酸の沈殿のほとんどは黄色である。ただし、超例外として赤褐色の沈殿を起こすクロム酸銀がある。これは非常に有名なので覚えておくと良い。その他で赤褐色の沈殿で有名なモノに水酸化鉄(III)(Fe(OH)3)がある。
 第一志望校レベルの突破口として「同じ試薬を加えたら赤褐色と黄色の沈殿が出てきた」という記述があったらクロム酸の試薬だ!
 赤褐色の沈殿は銀、黄色の沈殿は鉛というように途中まで分かってしまえば後は普通の知識で分かってします。
 他にmemberがたくさんいるときにはクロム酸の沈殿が意外な突破口となる。
 沈殿はここまでで95%は終わっている。  

3.CO32-、SO42- 

CaCO3、(CaSO4
BaCO3、BaSO4

 炭酸カルシウムは聞いたことがあるだろう。炭酸バリウムも仲間に入れておくこと。少し増やして炭酸カルシウムや硫酸バリウムも仲間に入れてsquair型に知識を増やしていく。炭酸、硫酸といったらカルシウム、バリウム。なぜ、CaSO4が()でくくられているのか?
 特別に()でくくる必要はない。しかし、沈殿というのは細かいはなしだが物質には溶解度があり、”溶解度○△以下は沈殿”とか明確な基準はない。沈殿する、しないは経験的に決められる。
 このような訳でけっこう境界線上にいる。問題文によってはCaSO4は溶けると記述されてたり、沈殿すると記述されていたりする。硫酸カルシウム(CaSO4)は一般的には沈殿するのだが、場合によっては溶けると考えないと問題が解けない、といったイジワルな問題もある。
 硫酸イオンについてはもう一つ。

(1)PBSO4↓(白)

 硫酸イオンは硫酸鉛の沈殿を作る。鉛蓄電池の範囲で『硫酸鉛は溶けるのか?』という疑問に当たるが、溶けるわけがないことが分かる。

(2)CaSO42H2O セッコウ
        ↓↑
   CaSO41/2H2O 焼きセッコウ

 例えば、お遣いで硫酸カルシウムを買いに行ったとする。どこへ買いに行けばよいか?
 文房具屋に買いに行けばよい。くれぐれも薬局には売っていない。しかし、『硫酸カルシウムをください』といっても、文房具屋の店主には通じないので注意しておこう。では、どう言えばよいかというと、『セッコウをください』と言えばよいのだ。
 例えば、チョークは炭酸カルシウムで出来ている。セッコウというのは硫酸カルシウム(CaSO4)1つに対して水2つで結晶を作っている。文房具屋にはCaSO4・1/2H2Oの分子式で表記するモノが売っている。1/2H2Oの1/2は便宜上分数にするのだが、本当は分数を書いたらダメ。これは半水和物といって一般に焼きセッコウと呼ばれている。文房具屋でセッコウを買うと、たいていは表面が黒い焼きセッコウという形態で販売されている。焼きセッコウは水を加えてよく練るとセッコウになる。これを焼くとサラサラのセッコウに戻ってしまう。
 

(3)CO32-Na+、K+(→沈殿せず)以外

 ナトリウムイオン、カリウムイオンはアルカリ金属の代表選手で入試の範囲では沈殿しない。
 炭酸イオンというのはNa+、K+以外なら銀イオンだろうが、銅イオンだろうが亜鉛イオンだろうが・・・相手が誰であろうがドンドン沈殿する。
 炭酸イオンの沈殿といったらバリウム、カルシウムというのはウソ。炭酸イオンとの反応で沈殿するイオンは山のようにあるからそれだけでは相手は分からない。
 そこで、入試の裏をかく。わざわざ炭酸イオンなんてモノを加えて沈殿したと記載されているイオンなんて言うのは炭酸にしか相手にして貰えないようなイオンではないか、ということでカルシウム、バリウムというのが導き出せるというように逆手にとって考えてみる。
 このことを知らなかったが為に問題が解けなかったなんて事は、入試では通用しないので肝に銘じておこう!

 ーコラムー

 Ca2C2O4 ↓ (白)
 Ca3(PO4)2 ↓ (白)

 これはとてもminorな範囲。どちらも沈殿の色は白。リン酸カルシウムはちょっと見慣れないかもしれないが、頭を使ってみよう!
 カルシウムは+2(Ca2+)、リン酸は-3(PO43-)である。最小公倍数は6。
 これらの物質が頻繁に登場するのは尿路結石のときだ。尿路結石とは、腎臓から膀胱にかけて尿管というモノがあるが、そこに石が詰まる病気のことを言う。この石の主成分がリン酸カルシウムなのだ。
 医大の授業でよく、尿路結石の石の主成分について聞かれることがある。体内にあるモノでカルシウムとの沈殿なのだから、普通はシュウ酸とかリン酸だろうと、知らなくとも予想はつく。体の中にはATP(アデノシン三リン酸)がたくさんある事から、リン酸がウヨウヨしているような状態から尿路結石の主成分はリン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)かシュウ酸カルシウム(Ca2C2O4)の2つであろうと論理的に帰結する。
 ちなみに、尿路結石の場合には強い腹痛がある。たいていの場合、石はレントゲンに写るのだが写らない場合がある。これは気のせいとかいうわけではなく実際に石があったときに見逃されてしまったら大変なことになる。実はレントゲンに写らない場合はカルシウムが含まれていないことが考えられる。つまり、尿酸などが固まって石になったときにはカルシウムが含まれていないためにレントゲンに写らない。よって、レントゲンに写らないから石がないと言うのはウソ。
 このときの治療はどうするのか?
 数学で楕円について勉強したと思うが、楕円に焦点があることを知っているだろう。
 焦点とは、一方の焦点から光を発射したとき光は楕円の局面で反射してもう一方の焦点へと集まる。
 このことを利用して、尿路結石の患者を楕円の回転体を横に切ったような形のカプセルのようなモノの中に入れ、結石が詰まっている箇所に焦点を合わせて、もう一方の焦点から超音波を一気に発射するとカプセルの内壁の局面に跳ね返って焦点を合わせた結石へ超音波が集中して破壊する。

 KCN → K+ + CN-
シアン化カリウム
(青酸カリウム)

 これは、物質名をシアン化カリウムという。推理小説などに毒殺の方法としてpopular青酸カリウムそのもの。
 新宿の公衆トイレに仕掛けられたのもシアン化カリウムである。これは上記の式のように電離する。シアン化カリウムは水酸化カリウムとシアン化水素が塩を作った、と把握しておく。シアン化カリウムの溶液を酸性にすることは極めて危険なことだ。常に溶液をアルカリ性に保って実験操作を続けられるような状態にしなければならない。
 シアン化カリウムは白い結晶で水に溶けると無色になる。では、何故『青い酸』と書いて青酸カリウムと呼ぶのか?
 この呼称にはちょっとした所以がある。青い梅の果実はかじると極めて危険なことはよく知られている。理由として、青い梅の実の種の周囲には微量ながらもシアン化カリウムが含まれているからだ。熟した梅の実にはシアン化カリウムは含まれていない。こういった理由から『青酸』カリと呼ぶようになった。
 シアン化物イオン(CN-1)といったら−1であることを覚えておこう!

 K4[Fe(CN)6]
 ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム

 変なイオンが登場してきた。物質名はヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムという。
 実は『ヘキサ(hexa)』というのは『6』という意味で『ヘキサシアノ』と言うと、シアンが6個ある事を示している。この分子式を見て鉄(Fe2+)であることは逆算できる。この分子式からカリウムイオン(K+)を4つとってあげると[Fe(CN)6]4-になる。そしてシアン化物イオン(CN-)を6個とってあげるとFe2+になる。

☆☆
 
 [FeII(CN)6]4- +Fe3+
 [FeIII(CN)6]3- +Fe2+

濃青色沈殿
ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン

 Feの上に小さくIIとかIIIと書いているが、これは便宜上のことで実際には書く必要はない。そうすると、[FeIII(CN)6]3-も分かる。この2つは電荷が違う。上の式は4-、下の式は3-である。この理由は4-の方が鉄がFe2+で3-の方は鉄がFe3+だから。3-の名前は『ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン』と言うように『酸』がつく。これは必ず、Fe3+。Fe2+が反応して([ ]の中がFe2+ならFe3+と反応して、[ ]の中がFe3+ならFe2+と反応して)濃青色の沈殿を作る。

 KSCN → K+ + SCN-
☆チオシアン化カリウム

Fe3+ + 3SCN- → Fe(SCN)3 ↓ 赤血色

 これは非常に鮮やかな動脈血の色。例えば、赤血色と言われたらFe3+だけを考えればよい。

4.[Ag(NH3)2]+、[Ag(CN)2]-、[Ag(S2O3)]3-  ☆☆

 鉄の錯イオンは今までにはアンモニアと化合したジアンミン銀イオンがあった。入試では銀の錯イオンがよく出るので上記の3つは知らなければならない。
 [Ag(CN)2]-・・・シアン化物イオン(CN-)に結びついている銀はAg+、シアン化物イオンはCN-でCN-が2つAg+1つなので電化を計算してー1。イオンには電化があるのでしっかりと計算しておく。
 [Ag(S2O3)]3-・・・()の外に付く数は他の2つと一緒。家来は必ず2人である。これは少しだけ見慣れないイオンと言って良い。

Na2S2O3 → 2Na+ + S2O33-

 Na2S2O3はチオ硫酸ナトリウムという。硫黄が付くと、『チオ』と呼ぶ事を覚えておこう。チオシアン化カリウム(KSCN)と比較してもそうである事が分かる。チオ硫酸ナトリウムが電離するとナトリウムイオン2つとチオ硫酸イオンに分かれる。相手が2つのナトリウムイオン(Na)なのでチオ硫酸イオン(S2O32-)の電荷は-2。このイオンが銀イオン(Ag+)に2つ配位するから電荷はtotalで1 + 2・(-2) = -3 となり、3-であると計算できる。

AgF 水溶性     大(溶解度)
AgCl ↓(白) アンモニア水に溶ける
AgBr    
AgI (黄) アンモニア水に溶けない

 この縦並びはハロゲン化銀である。AgF(フッ化銀)、AgCl(塩化銀)、AgBr(臭化銀)、AgI(ヨウ化銀)。
 つまり、ハロゲンのグループと銀とがつっくいたと言う言うだけのこと。
 フッ素というのはたいていは仲間はずれになる。AgFというのは水溶性の物質で沈殿しない。これは極めて重要な性質と考えて良い。対して、上記のAgFよりも下段にあるものは皆沈殿する。ご存じの通り、塩化銀は白でヨウ化銀は黄色の沈殿。このように、ヨウ化銀は非常に大切である。
 塩化銀(AgCl)はアンモニア水に溶ける。しかし、ヨウ化銀はアンモニア水に溶けない。この2つは必須知識として覚えておいて欲しい!
 上記にあげた塩化物は表を上に行くほど溶解度が高い。つまり溶けやすい。例えばフッ化銀は水に溶けるけど、塩化銀は水に溶けずにアンモニア水なら何とか溶ける。一番下のヨウ化銀になるとアンモニア水にさえ溶けないという状況だ。このように、周期表でのハロゲン属の並びとハロゲン化銀との溶解度には相関性があると考えて良い。ちなみに、臭化銀(AgBr)はAgClとAgIとの谷間に位置する。色は黄白色でアンモニア水に溶けるかというと微妙だ。・・・なので、入試には出ない。

CaF2   ホタル石
CaCl2 水溶性
CaBr2 水溶性
CaI2 水溶性

 ここでもまたフッ素は仲間はずれになってしまっている。
 フッ化カルシウムは結晶の問題でよく出題される。フッ化カルシウムはホタル石と一般的に呼ばれている。ホタル石の性質について少しふれておくと、モースの硬度計で硬度4に位置されている。ちなみに、硬度1は滑石、硬度10はダイヤモンドであることからどれだけの堅さなのかは想像つくだろう。
 沈殿だけなら1回で終わってしまう。フッ化カルシウムより下段はすべて水溶性。これは、ハロゲン化銀の逆と覚えていれば十分。
 何でも、フッ素が付いていれば溶けやすいというわけではない。あくまで仲間はずれと言うだけであって、フッ素が一番溶けると言うこともあればフッ素が一番溶けないと言うこともある。これはフッ素とくっつく相手によるので注意が必要。

 ーコラムー

 昔々、ある歯科医が歯の治療にきた女の子に丈夫な歯になるようにフッ化水素(HF)を歯に塗ったらその子は口から泡を吹いて死んでしまった。と言う事件が実際にあった。
 実は、フッ化水素というモノは歯に塗る場合、そのまま塗ると非常に危険なので強いアルカリ(=この場合は水酸化ナトリウム)で中和して塩の状態(HF + NaOH → NaF + H2)にしないとならない。
 なぜ、フッ化水素を塗ると歯が丈夫になるのか?
 歯にフッ化水素を塗ると歯の表面にフッ化カルシウムの沈殿による皮膜が出来て保護されるから。

 (反応式)
 CaCO3 + 2NaF → CaF2↓ + Na2CO3

MgSO4   水溶性 大(溶解度)
CaSO4    
SrSO4
BaSO4

 今度は逆パターンでアルカリ度類金属(2族)と硫酸イオン。
 まず、硫酸マグネシウム(MgSO4)は水溶性、その次に硫酸カルシウム(CaSO4)があり、硫酸カルシウムよりも下段が沈殿する。
 硫酸カルシウムつまりセッコウは沈殿するか否かが微妙なところである。上記の表で溶解度は上に行くほど大きく、下に行くほど小さい。だから、硫酸マグネシウムは水に溶ける。硫酸カルシウムもその次に溶解度が大きいので水に溶けるか否かは微妙なところ。対して、硫酸バリウムは溶解度が非常に小さいので水に溶けずに沈殿する。

Mg(OH)2   水溶性 小(溶解度)
Ca(OH)2    
Sr(OH)2
Ba(OH)2

 Lastは2族の水酸化物について。
 『Srはなんだ?』と思う人がいるかもしれないが、Srは物質名をストロンチウムと言い、非常にminorな物質。上記の表は2族の縦並びなのでSrがないと、格好が付かないから書かれている程度のモノと認識してかまわない。
 ここでは、逆の相関性を持つこともある。水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)だけがしっかりと沈殿する。水酸化マグネシウムが沈殿することを知らないと困るのでこの機に覚えておこう!
 ここで、理由を述べる。
 Ca(OH)2は水酸化カルシウムと言い、校庭のラインを引く消石灰。上記の表では上段へいくほど溶解度が小さい。よって、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)は溶けない。その下の水酸化カルシウム(Ca(OH)2)は水に溶けにくい。これは、校庭のラインの引くときにも使われているが、雨に濡れてラインが消えたというのはあまり見たことがない。このことから、水に溶けにくいことが容易に考えられる。
 ちなみに、上記の表の一番下の水酸化バリウム(Ba(OH)2)は水によく溶けるという関係になっている。

 鉄則

 ・相手によってフッ素が一番よく溶ける場合もあれば、フッ素が一番溶けない場合もある
 ・硫酸カルシウムは沈殿するか否かは微妙な立場にある
 ・硫化物の沈殿は『黒人社会』である
 


Back