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◎ 沈殿とは
はじめに
Ag+ + Cl- → AgCl↓(白)
銀イオンと塩化物イオンが反応して塩化銀の沈殿が出来る。沈殿とは沈むという事なので、すなわち溶けにくという事。
つまり、沈殿とは溶けにくいモノを作る組み合わせを覚えることに他ならない。
沈殿は、陽イオンで解説していく場合と陰イオンで解説していく場合があるが、陰イオンで解説した方がわかりやすいので、ここでは陰イオンの話をする。
OH- ☆ (水酸化物)
これを把握したら6割方は終わっていると考えてよい。水酸化物イオンの沈殿を水酸化物という。
OH-というとアルカリ性のイメージがあると、非常にとっつき易い。
NaOH → Na+ + OH-
NH3 + H2O → NH4+
+ OH-
アルカリ性の物質は他にもたくさんあるが水酸化物イオンの沈殿となると下記の2つの事柄を知っていれば十分である。
ここでは2段構えの考え方が必要。
一旦、沈殿するのは当たり前。
それで、沈殿したあとに追い打ちを掛ける。
過剰にアルカリを加える。このときに沈殿が溶ける場合がある。それが判定できなければならない。
1.Al3+
Al3+ + 3OH- → Al(0H)3↓(白)
ここの範囲は水酸化物イオンなのに陽イオンがいきなり登場している。もう、OH-の話は終わりなのか?否、そうではない。これは水酸化物イオンの沈殿の範囲の段落の1つと考える。
例えば、打者が5人いた場合のトップバッターと言うこと。アルミニウムイオン(Al3+)に水酸化ナトリウム、アンモニア水のどちらかを加えてもアルカリ性なのでOH-がくっつく。すると水酸化アルミニウム(Al(0H)3)の白色沈殿が生じる。実践では沈殿の色からこれは何か?、と予測することが求められるので沈殿の色をしっかりと把握しておくことが重要なことである。・・・と、ここまでが第一段階。普段は二段構えで第二段階へと進む。
第一段階で沈殿するのは当たり前!
では、OH-を過剰に加えたらどうなるのか?
このように、第二段階では沈殿が溶けるのか、溶けずにそのままか、を判定できなくてはならない。
OH-を過剰に加えると・・・
NaOH : Al(0H)3 + OH- → AlO2-
+ H2O
NH3:×
まず、水酸化ナトリウムを加えた場合、更にアルカリを加えるとOH-と反応し溶けた。反応式を見てAlO2-というようにイオンになっている。イオン化傾向の箇所でも述べているが、化学全般を通じて”イオンになった”という事は水溶液に溶けたということである。
アルミン酸イオンはどこかで聞き覚えはないだろうか?アルミン酸ナトリウム(NaAlO2)である。アルミン酸ナトリウムはナトリウムイオン(Na+)とアルミン酸イオン(AlO2-)がくっついたものである。
次に水酸化アルミニウムの沈殿にアンモニア水を過剰に加えても反応が起こらないから沈殿が溶けない。だから、沈殿したまま変化しない。
2.Zn
Zn2+ + 2OH- → Zn(0H)2↓(白)
まず、一旦、沈殿する。これは当たり前のことである。水酸化ナトリウムを加えようが、アンモニアを加えようが、一旦は沈殿する。問題は過剰にアルカリを加えたときである。
NaOH : Zn(0H)2 + 2OH- → ZnO22-
+ 2H2O
NH3: Zn(0H)2 + 4NH3 → [Zn(NH3)4]2+
+ 2OH-
まず、過剰に水酸化ナトリウムを加えた場合。
これは、沈殿が溶けてZnO22-(亜鉛酸イオン)になる。これはアルミの時と同様に考える。Al3+
の時はアルミン酸イオン(AlO2-)、Zn2+ のときは亜鉛酸イオンで同様である。ZnO22-の2-は当たり前と考える。アルミン酸イオンはAlO2-の1-であった。元々亜鉛はアルミニウムよりも電荷が1つ少ない。だから、アルミン酸イオンよりも1つ少ない2-になっている。
過剰にアンモニア水を加えた場合
アンモニアは弱いアルカリ性である。例えば、1000個のアンモニア分子を水に溶かしても1個くらいしかNH3
+ H2O → NH4+ + OH-にならない。よって過剰にアンモニア水を加えてもOH-が反応するのではなく、アンモニア分子(NH3)自体が反応する。
一般に[]でくくられたイオンを錯イオンという。配位結合で出来ているイオンを錯イオンと呼ぶ。ただし、[]でくくられているイオンだけが錯イオンというわけではない。アンモニウムイオン(NH4+)は[]でくくられていないが、配位結合で出来ているので錯イオンである。
ご多分に漏れず、[Zn(NH3)4]2+の中にも配位結合は含まれている。
アンモニアが各頂点に4つ配位している。この形が言えないと意味がない。
アンモニアが4つ亜鉛イオンに配位結合して正四面体形をしている。
3.Fe2+(淡緑色)、Fe3+(黄褐色)
鉄イオンにはFe2+とFe3+の2種類がある。Fe2+は淡い緑色、Fe3+は黄色もしくは黄褐色。
まず、沈殿は二段構えで意識する。
Fe2+ + 2OH- → Fe(0H)2↓(淡緑色、緑白色)
Fe(0H)2(水酸化鉄(II))の沈殿は淡緑色もしくは緑白色である。どちらでも好きな呼び方で答えて構わない。
Fe2+は淡緑色なので、それの沈殿になると淡緑色に白色を混ぜた色になる。
次にFe3+
Fe3+ + 3OH- → Fe(0H)3↓(赤褐色)
Fe(0H)3の沈殿はとても有名である。赤褐色というと褐色のことである。化学では単に茶色とは言わない。この事から、赤褐色の沈殿というと水酸化鉄(III)を逆算できるようにしておく必要がある。
アルカリを加えて一旦沈殿するのは当たり前。そこで、過剰にアルカリを加えたときどうなるかが問題となる。
◎ 過剰 → NaOH、NH3ともに溶けない。
実は、Fe2+、Fe3+とも一度沈殿したらそれっきりで沈殿が溶けたりすることはない。
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4.Cu2+
「銅イオンは青なんだ」ではなく、「青と言ったら銅イオン」を逆算する。アルカリを加えたらまずは一旦沈殿するのは当たり前。
Cu2+ + 2OH- → Cu(0H)2↓(青白色)
Cu2+の沈殿はCu2+が青色だからそれに白色を加えた青白色の沈殿である。
過剰にアルカリを加えると・・・
NaOH : ×
NH3: Cu(0H)2 + 4NH3 → [Cu(NH3)4]2+
+ 2OH-
(テトラアンミン銅(II)イオン(濃青色))
水酸化ナトリウムを加えても沈殿が溶けない。アンモニア水を過剰に加える場合は、アンモニア分子(NH3)自体が反応する。これは、錯イオンを作る。この錯イオンは非常に有名!
上記の錯イオンはテトラアンミン銅(II)イオンという。ギリシア語で『4』はテトラという。銅イオンはCu2+と書いてあるが、有機化学ではCu+も登場してくる。だから、ここではいちいち(II)をつける。色は、沈殿やイオンでは非常に重要で濃青色もしくは深青色である。色からイオンを逆算する問題は頻繁に出題されている。
錯イオンが登場したなら次に形を把握する。
ベースは銅イオンである。銅イオンはテトラアンミン亜鉛(II)イオン([Zn(NH3)4]2+)と同じようにアンモニア4つ配位している。しかし、正四面体ではなく正方形配位を取る。原子中のd軌道の電子の違いによるものが原因となっている。銅イオンはテトラアンミン亜鉛(II)イオンと同じくアンモニアが4つ配位結合しているのだが、正四面体ではなく正方形配位である。このような訳で正方形☆ となる。
上の図を見ると黄色のラインが引いてあるが、別の結合をしている訳ではない。アクマで形を見るための目安である。つまり、補助線みたいなものである。『テトラアンミン銅(II)イオンは正方形である』と、出てこないと完了した事にはならない。
5.Ag+
2Ag+ + 2OH- → Ag20↓(褐色) +
H2O
銀イオンの場合だけ、アルカリを加えてもなぜか水酸化銀ではなくて酸化銀(Ag20)になる。この場合のみ、酸化銀の沈澱が起こる。考え方は今までと同様。一旦、沈澱が起こるのは当たり前。
過剰にアルカリを加えると・・・
NaOH : ×
NH3: Ag20 + H2O + 4NH3
→ 2[Ag(NH3)2]2+ + 2OH-
水酸化ナトリウムを加えても沈澱は溶けず沈澱したまま。沈澱において大事なのは過剰にアルカリを加えて沈澱が溶けるか否か。細かい反応式は別にどうでもいい。
アンモニアを過剰に加えた場合、無色の錯イオンになる。この錯イオンのイメージは家来(=アンモニア)が2人いる。家来が2人いると言うと代表的な例は水戸黄門である。つまり、両サイドに助さんと格さんがいて、水戸黄門が真ん中にいるイメージである。
この錯イオンの名前をジアンミン銀(I)イオンと言う。これだけ把握していると6割は終了している。更に、硫化物の沈澱を学ぶと9割方は沈澱について学んだことになる。
鉄則
・ 沈澱は二段構えの意識が必要
・ 配位結合で作られているイオンを錯イオンと呼ぶ
・ 錯イオンが出来たら形を把握せよ!
・ 水酸化物イオンによる沈澱は過剰にアルカリ(OH-)を加えたら溶けるか溶けないかが勝負の分かれ目である。
6.おまけ
ちょっとマイナーなのだが、実際によく使う塩化物イオンの話をする。
水酸化物イオンによる沈澱は過剰にアルカリ(OH-)を加えたら溶けるの溶けないのかが、勝負の分かれ目となる。
Cl -☆ (塩化物)
Ag+ + Cl- → AgCl↓(白色)
Pb2+ + 2Cl- → PbCl2↓(白色) 塩化鉛(II)
『Ag+ + Cl- → AgCl↓』はどこかで見たことがあると思った人、これは沈澱の一番はじめの例である。
もうひとつはPb(鉛)の沈澱である。よく、Hg(水銀)の沈澱もあるがAgとPbの2つを把握しておくだけで十分。
鉛にはPb2+とPb4+があるので、塩化鉛(II)と表記しなければならない。AgCl、PbCl2ともに白色沈澱である。当然この2つを区別しなければならない。金属イオンが溶けているんだと逆算出来なければならない。
結局、もとの金属イオンを見つける。白色沈澱と言うだけでは区別できない当然これらの差を見ていかなくてはならない。
まず、塩化銀について
AgCl
(1) アンモニア水に溶ける
AgCl + 2NH3 → [Ag(NH3)2]+
+ Cl- ジアンミン銀(I)イオン
これは、アンモニア水に溶けると言う非常に有名な性質である。反応式は試験でよく書かされるので覚えておいた方がいいかもしれない。
上記で述べたように、銀はアンモニアに溶けるのでジアンミン銀(I)イオンになると言うのは見当はつく。
(2) 光で黒変
2AgCl −光→ 2Ag+ + Cl2
これは白黒写真の原理で光を当てると黒っぽくなる。上記の反応式のように塩化銀は分解し、銀の単体ができるからだ。
確認!
銀はイオン化傾向が小さく、イオンになりにくいためにイオンの状態からすぐに脱出しやすい。
光のエネルギーで簡単にイオンから脱出する。この銀は黒っぽくみえる。黒っぽく見えるのは錆びているからではない。析出した銀の表面はデコボコしているので光を吸収して黒っぽく見える。
次に、塩化鉛について
PbCl2
熱湯に溶ける
塩化物イオンの沈澱で銀か鉛のイオンかの判定をする時、必ずアンモニア水か熱湯が判定法として登場する。
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NaOH |
NH3 |
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Al(OH)3 ↓ |
○ |
× |
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Zn(OH)2 ↓ |
○ |
○ |
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Fe(OH)3 ↓ |
× |
× |
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Cu(OH)2 ↓ |
× |
○ |
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Ag20 ↓ |
× |
○ |
まず、沈澱が大量のアルカリに溶けるか否かと言う事でたいていの問題は溶ける。そして、上記の事柄が分かれば実際の系統分析の問題は解ける。
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