負の反応熱を利用した冷却反応


 はじめに

 今年も暑い夏が続きました。これを読んでいるみなさんの中にも市販されているたたくと冷たくなる携帯カイロの逆のような瞬間冷却剤を使用された方もいらっしゃると思います。この冷却作用には「溶解熱」というものが関係しています。
 溶解熱は「物質が溶媒に溶けるときも、一般に熱の出入りが同時に起こる。物質1molが多量の溶媒に溶けて、薄い溶液になるときに発生ないし吸収する熱量」と、考えてよいでしょう。 
 簡単にいってしまえば、「固体(粉末)が水に溶けたときに発生または吸収する熱量」と、考えてよいでしょう。
 そして、「溶解熱」は化学の授業では、「熱化学方程式」を理解するために実験して学習するのですがこの際使われるのは水酸化ナトリウムの様な発熱を伴う物質なのです。
 では、どうやって、溶解熱を利用して温度を下げるのかというと、溶かす物質(粉末の固体の方)の種類を変更すればよいのです。
 前出の瞬間冷却剤ですが、中身は「結晶ボウ酸」と呼ばれる「硫酸ナトリウム十水和物」や「硝酸アンモニウム」、「塩化アンモニウム」などの粉末の状態で入っており、それと一緒にたたくと破れる水のパックが入っています。つまり、冷却剤を強くたたくと水のパックが破れ、粉末と破れ合って、吸熱反応を開始して、温度が下がるのです。
 今回はそれとは違いますが、吸熱する水酸化ナトリウムとチオシアン酸アンモニウムを使用しました。

 (反応式)

 熱 + Ba(OH)2・8H2O + 2NH4SCN → Ba(SCN)2 + 2NH3↑ + 10H2O

 次に実験結果を報告します。

 1.実験結果

 第一回実験
 01/06/03 気温 26.0℃

 水酸化バリウム八水和物とチオシアン酸アンモニウムを使用。
 まず、50mlビーカーに純水20mlを入れ、温度計で水温を測定し、薬包紙に乗せた水酸化バリウム八水和物20gとチオシアン酸アンモニウム10gをビーカー内に投入し、水温の変化を測定した。

 1.純水20mlに溶解
 2.純水15mlに溶解
 3.氷で冷却した純水15mlに溶解

経過時間

0

10

20

30

40

50

60

70

80
液温1(℃)

26.2

17

15

13

11

10

9

9

8.5
液温2(℃)

27

17

9.5

7

6.5

6.2

6.5

7

7
液温3(℃)

15

10

5

3

3

2.5

3

3.5

3.5

ここまできて、冷え方の鈍いことに気づく。確か、本には「-10℃くらいまで下がる」と書いてあった気がしていたので、もう一度本を読み直してみました。水を入れてはいけないようでした。
 気を取り直して説明どうり再実験してみました。

 4.そのまま反応させる。

経過時間

0

10

20

30

40

50

60

70

80
液温4(℃)

26

15

3

-0.9

-1

-1

 明らかに冷却速度が速くなり液温低下が増大しました。しかし、この日はもう下校時刻でしたので、実証は次の機会にすることにしました。

 

 第二回実験
 01/07/19 気温 30.5℃

 やや蒸し暑い日でした。このような時は冷たい実験というのはいいものですが、発生するアンモニア臭が強くなるので、喚起に十分注意が必要がいりました。今回も-10℃以下までの冷却に成功しました。

 
経過時間

0

10

20

30

40

50

60

70

80
液温5(℃)

32

31.5

11.8

-0.1

-3.3

-3.1

-6.2

-4.1

-5
液温6(℃)

31.5

16.2

5.4

3.3

-2.9

-6

-7.7

-7.9

-11


 第三回実験
  01/09/04 

 二回の実験ではデータの確証性が薄いと思ったので、もう一回やっておく事にしました。

経過時間

0

10

20

30

40

50

60

70

80
液温7(℃)

28

16.8

9.1

-6

-6

-6

-6

-9

-9
液温8(℃)

28

12

6

-5

-11

-14

-14

-14

-14

 今回も-10℃以下までの冷却に成功。

 2.まとめ

 最初はやり方をも違えていたために、うまくいかなかったものの、その後はきちんと液温が低下して一安心でしたが、自分の不注意さを改めて感じました。
 元々、この実験は「文化祭の時期はまだ暑いから何か涼しい実験でも」という軽い気持ちで始めたもので、去年の文化祭でもやったのですが、硫酸アンモニウムなどを使ったために15℃くらいまでしか下がらなかった事がありました。そのため、今年は名誉挽回とばかりに、もう最終学年なのでやるかどうか迷ったのですが、何とか仕上げられました。

 <参考文献>

 日本化学会 訳編 : 「実験による化学への招待」(丸善)


Back