尿素の花を咲かせましょう


 〜はじめに〜

 皆さんは、結晶を作るということをしたことはありませんか?小学校の時の自由研究として、誰でも簡単に作ることのできるミョウバン の結晶作りなどに敢り組んだことのある方もいらっしやるのではないでしようか。
 ここの実験で扱う物質は尿素です。尿素とは、まさに尿の中に含まれている成分ですが、尿素自体は無色〜白色の結晶性の粉末でにおいはありません。人や肉食動物の体内で作られた有害なアンモニアを無毒化した時にできる物質です。
 また、尿素は肌の天然保湿因子の1つで医薬品や化粧品の原料、また園芸用の肥料として身近に使われているものです。
 そしてこの尿素は、ミョウバンの結晶作りに負けないくらい面白い形になります。

 さて、この尿素は、ウェーラー(ドイツ人)が1828年にシアン酸アンモニウム(NH4OCN)から合成したことでも有名です。

(反応式)
 NH4OCN → H2NCONH2

 なぜなら、当時、有機化合物(炭素がたくさん結合して出来ている化合物)は、生命力によってしか作られないと考えられていました。と ころが、無機化合物と考えられているシアン酸アンモニウムから有機化合物の尿素が作られたということで学会に大きな衝撃をあたえました。 また、今日の有機化合物(ポリエステルやPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどの発展のきっかけとなった人物です。

〜実験に必要なもの〜

■試薬
尿素 H2NCONH2
PVA
洗剤
食紅

■器具
ビーカー
薬さじ
ガラス棒
ホットマグネチックスターラー(あると便利)

耳より(?)情報

これらの材料は、化学部員でなくても、簡単にそろえることができます。今目の尿素の花の展示をご覧になって、気に入ってくださった方は、是非やってみてください。

試薬&器具のそろえ方

 ・ 尿素は園芸屋さんで販売されているので、簡単に手に入ります。
 ・ PVAは洗濯のりのことです。
 ・ 食紅も薬局などで手に入りますが、無くても白いきれいな結晶ができます。
 ・ 結晶を育てるためのビーカーは、グラスで代用できます。ワイングラスなんかでやると素敵です。また、易吹きに入れて、様子を見ながら葉に吹きかけていくと、雪が横もったようになります。

 〜いよいよ実験です〜

■実験手順

1.尿素108gを水100mlに溶かします。暖めながら溶かしていくと溶けやすいです。私はホットマグネッチクスターラーを使いました。 着色したい場合は、水溶性色素(食紅)で色をつけます。

2.手順1で作った尿素の水溶液を100gとり、さらに尿素10gとPVA5ml、洗剤1mlを加えて加熱します。

3.尿素が溶けたら、花を咲かせる容器に半分くらい入れます。
 次に、容器を傾けて、壁面を濡らして静置します。
 ※壁面を濡らすのは、結晶の成長を早めるためです。

4.しばらくたっと…

 一晩たつと、大きな花(結晶)に成長しています。
 天気の悪い目にやると、しおれた感じになるので、晴れた目にやりましょう。
 また、花の成長が止まったら、残った溶液をスポイトで吸って、滴下するとよいです。

 

 ■解説

 砂糖や食塩、その他の物質の飽和水溶液を空気中に放置すると、水が蒸発して結晶が析出します。結晶のでき方は溶液中に共存する他物質や蒸発の条件(温度、湿度、風遠など)、容器の材質や形状などによって異なります。通常は、溶液のあとに結晶が析出するのですが、クリーピングといって、容器の壁を這うように縞晶がひろがってできる場合もあります。また、時としてはクリープした緒晶から、木や枝やとげのような細い結晶がクリープ面に直角に生えてきます、ですから、容器の形を適当に工夫すると、いろいろな面白い緒晶の造形物ができます。「尿素の花」はこうして作られます。

〜尿素の性質〜

 尿素は、分子量60.06で、無味無臭の緯晶です。水溶液は、ほぼ中性です。(1%の水溶液のpHは約6)水に非常に溶けやすく、工タノールにはやや溶けやすいです。また、工一テル,クロロホルムには非常に溶けにくいです。加熟すると約133℃で融解し、更に加熟すると分解して、アンモニアを生じます。

尿素

〜肥料として〜

 尿素は肥料にも使われています。肥料の3要素といえば窒素・リン酸・カリウムですが、この尿素は窒素の補給に使われます。以前ま窒素源として硫酸アンモニウム(硫安)がよく使われていましたが、これは畑の土壕を酸性にしてしまうので、最近では中性の尿素肥料が主流になりつつあるようです。尿素肥料は窒素約46.0%を含み、窒素質肥料中最も窒素含有量が高いものです。水に溶けやすく、強い吸湿栓を有します。中性肥料で、土壌中で微生物により分解され、アンモニアか硝酸の形で植物に吸収、利用されます。分解後アンモニアと炭酸になるので連用しても土壊に悪影響を及ぼしにくい、また、硝酸化成を受けやすい葉面散布でも吸収することができるといった特徴があります。

〜医薬晶として〜

 また、尿素は、医薬品にも使われています。具体的には、角化症.乾燥性皮膚疾患治療剤(軟膏剤)、神経・筋機能賦活剤(静注用),ヘリコパクターピロリ感染診断用剤,ビタミンB1、B6、B12剤(静注用)などがあります。

〜化粧品として〜

 尿素が保湿剤として使われているのは有名ですが、どのように使われているのでしょうか。
 尿素とは、そもそも天然保湿因子の1つなのです。アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、足底部亀裂性皮膚炎等の角化性皮膚疾患治療薬の原料(医薬用)に用いられます。他には、グリセリン等と併用して皮膚の乾燥を防ぐ保湿剤(化粧晶・医薬晶・医薬部外品)に使用されています。
 それでは、尿素の保湿作用とはなんでしょう。
 尿素は、水分子と水素結合をして交じり合うことができます。(※)水と尿素は非常になじみがいいのです。このため皮膚に尿素クリームを 塗っておけぱ尿素がしっかりと水分子をつかまえ、肌の乾燥を防ぐというわけです。

 ※ 尿素は下の図のように6ケ所の水素結合サイトを持っています。水素結合は通常の結合(共有結合といいます)の10分の1程度の強さですが、実際の分子の中ではなかなかあなどりがたい力を発揮します。また、水の分子はやはり4カ所のサイトを持っており、両者は水素結合を介してくっつき合い、混じり合うことができます。

 また、尿素には皮膚表面の角質を取り除く働きがあります。角質を作るタンパク質の分子はCO-NHという構造をたくさん持っており、互いに水素結合することでくっつきあっています。ここに尿素を加えるとタンパク同士の水素結合の間に割り込んでその構造を破壊し・溶かしてしまうわけです。その結果、尿素は飾の乾燥を防いで潤いを保つだけでなく肌をツルツルにする作用も合わせ持つことになります。
 また尿素はもともとが生体成分ですので、毒性などの心配がなく安心して使えるというメリットもあります。

■実験後記

 「尿素の花」の実験をして、尿素の保湿作用に興映を持った私は、尿素の手作り化粧水を作ってみることにしました。
 作り方はいたって簡単ですし、材料もホームセンターと薬局で手に入るものばかりです。使用感はとてもよく、保存料が入っていないので、お肌にも安心。オススメなので、作り方をご紹介します。
 
尿素 肥料用の尿素は、園芸店やホームセンターなどで市販されています。
1kg入りのものが200〜300円程度です。

グリセリン グリセリンは薬局で市販されています。
50ml入りで300〜400円程度です。

水・計量カップ 水は水遺水をそのまま使用します。計量カップがあるとはかるのに便利です。

容器 ペットボトルや空き親などがあると、美飢水を作るのにも、他の審器に移し替えるのにもそのまま保存するのにも便利です。他に、化粧水の空き瓶も便利です。水でよく洗ってから使用します。

計量スプーン 尿素やグリセリンを取り分けるときに使用します。

作り方

1.尿素50g、水200ml、グリセリン小さじ一杯を用意します。
2.容器(蜂蜜の空き容器など)のふたを取り、尿素を入れます。
3.2の容器に水道水200mlを加えます。
4.容器にふたをして、尿素が溶けて透明になるまでよく振って混ぜます。(約1分間)。
5.尿素が溶けたらグリセリンを加えて、もう一度よく振ります。美肌水の原液の出来上がりです。
6.美肌水の原液を、顔に使用する場合は約10倍、体に使用する場合は約5倍に薄めます。化粧水の空き瓶、スプレー容器などに移し替えておくと便利です。
7.容器にラベルを貼り、台所や鏡台の前など、目に付くところにおいて置いておくと便利です。刺激を感じるようなら使用は中止して下さい。


Back