葉脈標本deしおりをつくろう!
みかんの缶詰もおいしそう?


 〜はじめに〜

 植物の葉を光に透かしてみると、複雑な網の目や、まっすぐに伸ぴたすじのようなものが見えます。これが葉脈です。
 葉脈は、葉の中の維管束であり、茎の維管東とつながっています。葉脈の形は、双子葉類では網状脈、単子葉類では平行脈です。今回の実験で使ったヒイラギは、双子糞類で網状脈です。そして、葉脈の太さは、中央の太い主脈、これらから枝分かれした支脈が広カミり、末端に行くほど細くなっています。葉脈は、木部(主に導管)と師部(主に師管)から成っています。棄の上面が木部、下面が師部となっています。
 葉脈は、葉を支持する骨格となっています。また、根から吸収した水分・養分は木部の導管を通ります。葉緑体で光合成を行って生成した炭水化物は師部の師管を通ります。
 水分、養分の吸収と移動はなぜ起きるのでしょうか。水分は、浸透現象によります。(土壌中の水溶液濃度より根毛の浸透圧のほうが商いのです。これよりも木部の導管のほうが高く、終点の葉で水分の蒸散と消費が行われます。)
 養分(無機塩類)は、土壌中の方が根毛より濃度が高いので、拡散によって吸収されていきます。また、無機塩類の種類によっては濃度が逆でも、必要なものは能動輸送で取り込むシステムカミ傭わっています。

1.実験に必要なもの

 ■試薬
2ml/lの水酸化ナトリウム水溶液NaOH(80gの水酸化ナトリウムを水1リットルに溶かしたもの)
次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)NaCL(2NaCl → 2NaCl+O2)

 ■器具
ビーカ、ピンセット、古い歯ブラシOr試験管プラシ、保護メガネ

 葉脈標本に逐した木の葉を逐ぴましょう

 葉脈標本に適するのは、ヒイラギ、椿などの肉厚で硬い葉です。単子葉植物の葉は、葉が平行になっているので、この実験には向きません。また、椿に比べ、ヒイラギの葉脈は丈夫で形が崩れにくいので、より作りやすいと思います。
 若い葉や斑が入っている葉は適しません。古く、光沢があり、斑が入っていない葉は、葉肉や余分な繊維を簡単に取り除くことができます。
 同じ種類の葉でも、枝のどの位置の葉か、日の当たり具合がどうだったか、季節はいつかなどによって、煮る時聞や、仕上がりが異なります。

2.いよいよ案験

 2−1.実峻手順

1.選んだ葉を、水酸化ナトリウム水溶液で20分くらい煮ます。1度沸騰させてから、弱火でしばらく熱すると、取りやすくなります。
 水酸化ナトリウムは、たんぱく質をとかす危険な薬品なので、目や皮膚につかないように注意します。また、目に入ると失明の危険があるので、保護メガネを着用します。皮膚についた時は、流水でぬめり気を完全に洗い落します。1度沸騰させてから、弱火でしばらく熱すると、取りやすくなります。

2.葉が柔らかく茶色になったら、とり出し、流水でよく洗い、流水を当てながら、歯ブラシ or 試験管ブラシを葉に垂直にあて、軽くたたいて葉肉や余分な繊維を敢り除きます。強くたたいて無理に葉肉を敢ると、葉脈が切れてしまうので気をつけます。葉肉が硬い場合は、無理に取ろうとしないで、再度、水酸化ナトリウム溶液で煮るようにします。

3.葉脈の色素を落とし染色しやすくするために、次亜塩素酸ナトリウムに10分ほど浸し、水でよくゆすぎます。長時間浸しすぎると 葉脈が破れたり、溶けてしまうので気をつけます。

4.形の変形を防ぐために、窓やろ紙に貼りっけ、乾燥させます。葉の裏側から貼りつけると良いです。
 乾燥したら染色し・ラミネート用細こ挟み、ラミネートします。

 〜では、なぜこのような方法で葉脈が取り出せたのでしょうか〜

 2−2.解説

 葉を煮るとき、どうして水酸化ナトリウム水溶液を入れるのでしょうか?
 植物の細胞同士は、ペクチ!でくっついています。そして、細胞は、細胞膜と細胞壁で囲まれています。紬胞膜は、たんぱく質とリン 脂質、細胞壁は主にペクチン質とセルロースからできています。
 ペクチン質は、酸性多糖類であり、エステル結合を持つので、強アルカリの水酸化ナトリウムと反麻し、水に混ざりやすくなります。
たんぱく質や脂質は、加勲により加水分解します。

っまり、綱胞はほとんどがタンパク質で、タンパク質は水酸化ナトリウム(アルカリ)で分解されて溶けていくということです。アルカ リを手につけると指先がヌルヌルするのと同じです。

植物の葉の葉脈は、維管束系です。維管東系は、根から水や養分などを吸い上げる通り道の遺管、葉で作られた有機養分を体の各所に運ぶ師管から成り立っています。維管東系は葉のほかの部分に比べてセルロースが多くて硬いので反応を受けにくく、残るのです。
 このような水酸化ナトリウムの性質を利用して、皆さんに身近なある物がつくられています。ある物とはみかんの缶詰です!!缶詰のみかんをむいていたのは、薬品だったのです。

3.缶詰みかんのつくられかた

 みかんの缶詰工場では、静岡、愛媛、九州などでとれた温州みかんをつかって、缶詰をつくっています。  

Step1 まず、みかんに熟湯を通すか、蒸気をあてて外側の皮をやわらかくしてから、機械でむきます。
Step2 この外側の皮をむいた、みかんを、水の勢いで逆円錐形に張られたゴムの糸の間に押し込みます。そこを通り抜けると1房ずつに割れるしくみになっています。
Step3 Step1・2までは機械的に行っているのですが、1房ずつのみかんの皮(袋)をむくのは、概械ではなく、薬品の働きを利用します。
使う薬品は、塩酸と水酸化ナトリウムです。
塩酸は、細胞と細胞とをっないでいる物質をバラバラにしやすくします。
水酸化ナトリウムは皮膜を溶かします。
最初は、塩酸とともに流し、その後水酸化ナトリウム水溶液と一緒に流します。
すると、房の皮は、溶けてはがれてしまいます。後は、水でよく薬品を洗い流します。

 薬品といっても、食品に使ってもよいとされる純粋なものを使い、最後に水で洗いますから、製品には残っていません。
 最後に、皮をとった房を缶に入れて、シロツプ(糖液)を注ぎます。そして真空状態で缶にふたをして、殺菌、冷却して缶詰のできあがりです。他の果物の缶詰も、纂本はみかんと同様、機械と薬品処理を使って製造しています。
 工場でみかんの缶請をつくるのに必要な薬品が水酸化ナトリウムと塩酸ならば、学校の化学室でも作れるかもしれない!
 葉脈標本の原理への理解がもっと深まるかも…
 ということで、やっちゃいました!

 3−1.みかんの缶詰をつくろう!

 〜実験に必要なもの〜

 ■試薬
 みかん(試薬のコーナーに書くものではないような…)、0.3mol/lの水酸化ナトリウム水溶液 Na0H、O.4mol/lの塩酸HCl、 (フェノールフタレイン)

0.3ool水酸化ナトリウム水溶液:水250mlにNaOH 3gを加えて溶かす。
0.4mol塩酸:水250m1に濃塩酸8.3mlを加える。

 ■器具
 薬さじ、500mlビ一カー、ガラス棒、温度計、ガスバーナー

 3−2.実験手順

 1.みかんの外皮をむき、房ごとにバラバラにします。

 

 2.40℃ぐらいに加熱した0.4mol/lの塩酸250mlに、みかんをの房を入れ、5分ほどかき混ぜます。温度が高くなりすぎると、実が崩れやすくなったり・酸味がきつくなったりするので、注意が必要です。
 今回は、湯せんで実験をしました。  

 ※かき混ぜる遠度は0.5回転/秒ぐらいです。
 ※この量でみかん4個分ぐらいまでできます。
 その後、塩酸を捨て、水で4回ほど洗います。

 3.40℃ぐらいに加熱した0.3mol/lの水酸化ナトリウム250mlに、水を 切ったみかんを加え、5分ほどかき混ぜます。
 その後、水で4回ほどゆっくり洗います。

※アルカリが気になる場合は、洗液にフェノールフタレインをカ回 え、赤くなっていないことを確認します。
※水酸化ナトリウムの廃液にメタノールを加えると、ペクチンの 沈殿カミできます。

 4.完成です。
 本来ならぱ「試食」なのですが、食品用の純粋な薬品を使用していないため、安全性に問題があるので、できません。

 3−3.解説

 みかんの内皮(じょうのう)には、ペクチンが多く含まれています。ペクチンは植物細胞どうしをくっつけている接着剤みたいなものです。その中のツブツブ(さのう)はセルロースの割合が多いのです。

 ※ペクチンは、細胞壁成分の1つで、細胞壁間に存在し、細胞相互を結合しています。化学的には、酸性多精類の一種です。野菜を煮る と柔らかくなるのは、ペクチンカミ溶けさり、組織が崩れるからです。
 ※セルロ一スは細胞壁の主成分で、多精類の一種です。酸やセルラーゼによってブドウ糖やセロビオースになります。

 塩酸の酸性がセルロースをバラバラに分解し、水酸化ナトリウムの塩基性がペクチンを溶かすことでみかんの内皮がむけるのです。

 〜缶詰に関するお話〜

 みかんの缶詰を開けたときに、糖液が白濁したり、果肉に白いツブツブがつくことがありますよね。これは、果肉に含まれるヘスペリジンが溶け出し、ペクチンと絡み合って生じたもので無害です。早期採取のミカンに生じやすい現象です。
 ほとんどの果物は缶詰にすることができます。ですが、例外もあります。バナナは砂瘡液(シロヅプ)の濃度が高いために、果実の糖分 を逆に吸い出してしまい、おいしくなくなります。また、メロンは熱を加えるとおいしくなくなるので、街詰には不向きです。

ここまで読んで、私も葉脈を作ってみたい!と思った方のために、ご家庭でもできる葉脈標本の作り方をご紹介します。

4.重曹で葉脈標本

 葉脈標本づくりは、葉をアルカリ性水溶液で煮ることが必要なため、先ほどご紹介したようにかなり危険ですが、水酸化ナトリウム水溶液を使用していました。しかし、この方法をご家庭で実践してみるのは危険ですし、薬品もなかなか手に入りにくいですよね。そこで、なにか良い方法がないかと調べたところ…ありました!重曹(炭酸水素ナトリウム)を使う方法カ主!この実験は、炭酸水素ナトリウムの 熱分解によって行うので、津意事項を守れぱご家庭でも可能になるのです。

 〜 実験に必要なもの 〜

 ■試薬
 重曹(炭酸水素ナトリウム)、塩素系漂白剤、染料(インキ、または木綿用染料)

 ■器具
 鍋(ステンレスか鉄、またはホーロー製)
 ※注意:アノレミニウム製の鍋はアルカリに溶かされるため使用できません。
 ノミツト、ブラシ、ピンセット、ラミネートフィルム

 4−1.実験手順

 ▲炭酸ナトリウム水溶液づくり

1.重曹(炭酸水素ナトリウム)を鍋に入れ、中火で5分ほど空妙りし、薬品が重たい感じになったら火を止めます。

2.熱分解生成物の炭酸ナトリウムが冷えてから徐々に水を加え、10%程度の水溶液にします。これは、せっけん水よりわずかにアルカリが強い程度なので、注意すれぱご家庭でも扱える範囲です。

 ※ 注意:手で触れたり、目に入らないように注意し、もしかの場 合は流水でよく洗い、医師に相談します。

 ▲葉脈標本作り

1.炭酸ナトリウム水溶液に薬を入れ、弱火で数十分〜数時間煮ます。葉脈が傷つくのを避けるため、かき混ぜません箏葉が液に沈んで 内側まで濡れたようになればピンセヅトで取り出し、ブラシで軽く叩いてとけ具合を調べます。調子カ葦よけれぱ薬を取り出します。

2.取り出した葉を水でよく洗い、流水を当てながら、ブラシで軽く 叩いては丁寧な水洗いを繰り返すと葉脈だけになります。

3.葉脈に着色する際、発色をよくするために、洗濯用の塩素系漂白剤で漂白します。長時間浸し続けると葉脈が痛んでしまうので気をつけます。その後、水洗いし、葉脈を平らに窓などに貼り付け、乾燥させます。

4.染料で着色し、保存します。
 葉脈標本は、ノートや台紙に貼り付けたり、額に入れたりします。
 ラミネートフィノレムで封入すると長期保存が可能なだけではなく、耐水性のある美しいカードタイプの標本となります。パンチで穴を開け、そこにリボンを通すと、素敵なしおりになります。ラミネートフィルムは封入に専用の機械が必要になりますが、カードサイズならアイロンで代用できます。

 4−2.解説

 どうして童曹を空妙りしただけで、葉肉を取り除けるようになったのでしょうか?

 ※重曹は、炭酸ナトリウムのことで、ご家庭の台所で、アク抜きや膨らし粉として使われています。

 炭酸水素ナトリゥムは熱分解チるので、鍋で空妙りした際に、水蒸気と二酸化炭素が発生し、炭酸ナトリウムが残るというわけです。
 化学反応式で表すと、以下のようになります。

2NaHC03→Na2C03 十 H20 + C02
(炭酸水素ナトリウム)(炭酸ナトリウム)(水蒸気)(二酸化炭素)

 熟分解生成物の炭酸ナトリウムは水に溶けやすく,水溶液はアルカリ性を示します。水酸化ナトリウム程ではありませんが,人体に危険なアルカリ性です。やはり,充分に注意します。炭酸ナトリウム水溶液の中に葉を入れて煮ると葉肉部分が優先的にとけて柔らかくなります。そのため,葉をブラシで軽く叩いては丁寧に水洗すると葉脈だけが残るのです。
 この実験は、水酸化ナトリウムで煮ると葉脈が溶けてしまうような葉肉の薄い葉を扱うのに大変便利です。逆に、ヒイラギなど、肉厚な葉で行うと、とても長い時間煮なくてはいけないので大変ですが・・・
 私は椿で行いました。いつもは水酸化ナトリウムで煮すぎてしまい、葉脈まで溶かしてしまうという苦い恩いをしたのですが、重曹を用いる方法で、美しい葉脈を取り出すことに成功しました。


Back