アミノ酸とタンパク質


1.アミノ酸

 上記の構造式が一般的な構造式である。下線部の水素に注目する。アミノ基というくらいだから構造式中にアミノ酸、カルボキシル基があるのは当たり前である。むしろもう一つ水素があるという事に注目した方がよい。
 上記のはアミノ酸の基本構造である。分子量をの中に代入すると分子量74が求まる。
 一般にCについている基が4つとも違うということが殆どなので光学異性体がある。


 一番簡単なアミノ酸はグリシンである。Rは水素である。これは光学異性体はない。何故ならR−が水素だと炭素に2つくっついている事になるから。
 入試で問われるアミノ酸はグリシンとアラニンである。実際に必ず聞かれるのは2つだけだから分子量を把握してどこからでも逆算できるようにしたい。R-がメチル基(-CH3)になるとアラニンになる。光学異性体はここからずっとある。

 共通構造の分子量が74で、メチル基の分子量が15なので足して89になる。アミノ酸はこのほかにもたくさんある。勿論このほかにもグルタミン酸とリシンがある。グルタミン酸と軽く見る程度でよい。

 グルタミン酸は分子量を知る必要はない。グルタミン酸は通常のアミノ酸の共通部分以外にカルボキシル基をもう一つ持っている。だから、このようなモノを酸性アミノ酸という。カルボキシル基がもう一つあるのでグルタミン酸は酸性というimageで十分である。
 リシンも同様で、リシンの場合は逆にアミノ酸がもう一つ付いているので塩基性アミノ酸である。

 グリシンとリシンはオマケ程度である。グルタミン酸は酸性とかリシンは塩基性とかをimageしておくだけでよい。

2.アミノ酸とpH

 ex) グリシン

アミノ酸は酸性だと下記のようになる。

 周囲が酸性なのでアミノ酸としては塩基性を示すアミノ基を使って周囲の酸性(H+)と塩になる。周囲が酸なのでアミノ酸としては塩基を出し、塩基性のアミノ基塩つまり、イオンを作る。

 周囲がアルカリだと話が逆になる。周囲がアルカリだとアミノ酸自身は酸を出す。ここら辺の話は前述の酸性アミノ酸とか塩基性アミノ酸とは違う。前述の酸性アミノ酸云々はアミノ酸自身が酸性とかアルカリ性であるという話。ここでは、グリシン自身は中性である。アクマでも酸性溶液の中にグリシンを放り込んで周囲が酸性とかアルカリ性であるということである。

 『1.アミノ酸』で出てきたグリシンはない。何故なら、カルボキシル基は酸性、アミノ基はアルカリ性、自分の中に酸とアルカリがあったら自分の中で中和しているに決まっている。実際に、酸とアルカリが同時に存在したら自動的に中和する。そのため、グリシンは普段は両性イオンの状態で存在する。
 両性イオンから引用していけば分かるのだが、アミノ酸は電気をたくさん持っているので水に溶けやすいのは当然と考えていく。このように電気をたくさん持っているということはイオン化しやすいので、水によく溶けると導ける。
 電気をたくさん持っている。では+,ーに引っ張り合いましょうということで分子量の割には融点がかなり高い。イオンを持っているということは電気を持っているのだから、+,−で引っ張り合うので分子量の割には融点が高い。

 鉄則

 ・一番簡単なアミノ酸はグリシンである。

3.タンパク質

 縮重合とは、脱水結合で分子中から水が取れその分縮んでたくさん繋がることである。

(cf)GABA(γ−Amino-Butyric-Acid)

 γ−アミノ酪酸

 これは本当に教養的範囲である。α−アミノ酸が何故『α−』というのか、と疑問に思った時点で覚えておくと良い。
 ブタン(C4H8)は炭素を4つもっているだから炭素4つのカルボン酸ということで”Butyric-Acid”つまり酪酸である。
 炭素1個はギ酸、炭素2個は酢酸、炭素3個はプロピオン酸、炭素4個は酪酸である。
 γ−アミノ酪酸の構造式を書くと下記のようになる。

 実はカルボキシル基のお隣の炭素をα炭素と言い、次をβ炭素という、大学では生化学でまずβ酸化を学ぶ。β酸化とは2つごとに酸化つまり、β炭素のところで結合が切れるという事が生体内で起こっている。そのβ炭素の隣がγ炭素である。
 つまり、γ炭素にアミノ基が付いている酪酸をγ−アミノ酪酸という。
 このことから、α−アミノ酸とはα炭素にアミノ基の付いているアミノ酸である。タンパク質を作っているのは実はα−アミノ酸である。
 γ−アミノ酪酸は脳に存在する。脳内の活性物質である。現在、この文章を読んでいる人は盛んにγ−アミノ酪酸を使っている。そして、使い切るとγ炭素に付いていたアミノ基はだんだんと水酸基へと変換していく。これをγ−ヒドロキシ酪酸という。このγ−ヒドロキシ酪酸が溜まると、眠くなってくる。そして、寝ている間に水酸基がアミノ基に戻り目が覚める。
 γ−アミノ酪酸はタンパク質を作らない。アクマでもα−アミノ酸がタンパク質を作るのである。もし、γ−アミノ酪酸がタンパク質を作ったとしたら脳みそが筋肉と言うことになってしまう。
 光学異性体があるとか今まで述べてきたが、光学異性体の片方だけである。別にL体とかD体とかは大学生になってから見ればよい。『3.タンパク質』で”L体”と書いたのは光学異性体の一方だけということになる。両方とも使うと考えてはならない。これは事実であるから、事実をねじ曲げてはならない!
 α−アミノ酸がたくさん縮重合してペプチド結合を作る。

 アミノ酸とカルボキシル基とがくっついて水が取れた。今まではアミノ結合と述べてきたが、別にアミノ結合でも良いのだがタンパク質なのでペプチド結合という。必ずアミノ基とカルボキシル基を持っていると言うことは手を2本持っているのでズラッと繋がることが当然のことくできる。つまり、アミノ基がたくさん繋がることによってタンパク質ができあがる。

(☆ タンパク質の構造)

これはあくまでも参考である。ただこの意識があると、非常によいTecnical wordが使える。タンパク質の構造は複雑で1次構造から4次構造まである。


 上記の波線はタンパク質が多量に繋がっていることを示している。すなわち、α−アミノ酸からポリペプチドができることを示している。
 ポリペプチドとタンパク質はどう違うのか?
 アミノ酸が単に繋がっているだけではタンパク質と言えない、という訳ではないが、タンパク質は後に述べるように色々と折れ曲がって立体構造をして特殊な動きとかするわけである。それで初めてタンパク質というわけである。だから、この状態は単にアミノ酸が長く繋がっているだけなのでペプチドと言い、沢山あるのでポリペプチドという。タンパク質との違いはポリペプチドがクニャクニャと2次構造、3次構造をして色々な働きをするという証明でタンパク質という。

 2次構造はポリペプチドがクニャクニャと曲がる。放っておいてのもこのような構造にはならないので水素結合が働く。
 さらに複雑に折りたたむ。1次構造が1次元、2次構造が2次元、3次構造が3次元と考えると良い。まず、2次構造で平面っぽくなり、それが折れ曲がって立体的になると考える。だから、2次構造の続きみたいなモノである。そのようにしてできあがったモノをサブユニットという。この塊同士が互いに相互作用するのを4次構造という。1次元、2次元、3次元、4次元でできあがったモノが近づいて初めて働き出す、あるいは働きを阻止するのを4次構造、相互作用という。

 

4.タンパク質の変性

 これらは入試の必須の範囲である。imageは肉を焼いたら冷やしても元には戻らない、と言うことからタンパク質はデリケートなモノである。つまり、すぐに変性してしまう。
 例えば、焼いたりしたらすぐに変性してしまう、あるいは酸やアルコールを加えてもすぐに変性してしまう。

← 酸、アルカリ、熱、アルコール、重金属(Hg)

重金属の中で代表的なモノが水銀(Hg)である。水銀は体内に吸収されると神経細胞を冒してしまうので毒性がある。だから、水俣病が発生した。

矢印のモノが入ると・・・

 →  
 分子内の水素結合が切断され
 複雑な高次構造(立体構造)が破壊されて起こる不可逆的な変化。

 水素結合を切るとタンパク質の型が崩れる。結合のより弱いところを切って型を崩せば良いのだから、それほど野蛮なことではない。それだけでタンパク質の働きは完全になくなってしまう。
 参考書によっては高次構造を立体構造と書いているモノがある。工学部系統の受験生は立体構造だけで覚えて良いが医学系の受験生は高次構造と一緒に覚えて欲しい!
 上記で『複雑な高次構造(立体構造)が破壊されて』とあるが、これはつまり、1次構造は壊さない。アクマでも2次構造以上の複雑なモノ。タンパク質の変性の理由はよく聞かれるので答えられるようにしておくこと。

 鉄則

 タンパク質は非常にデリケートである。

5.タンパク質の検出

(1)キサントプロテイン反応

 ☆ 濃硝酸で黄色
 (ベンゼン環のニトロ化)

 ニトロベンゼンが黄色と言うことは比較的有名な事実である。アミノ酸は20種類もあるから中にはベンゼン環を含んでいるモノもある。それがニトロ化される。全てのタンパク質が濃硝酸で黄色になる訳ではないことに注意して欲しい!何故なら、一般的なアミノ酸はその分子構造中にベンゼン環を含んでいないからである。これはアミノ酸が構造中にベンゼン環を含んでいる場合のみ黄色くなるのである。

 (更にNaOHを加えると橙色に変化)

 これはオマケである。アクマでメインは『濃硝酸で黄色になる』である。

(2)ビウレット反応

 NaOHを加えたあとCuSO4を加える →  ☆☆☆
 ペプチド結合がCu2+に配位して錯体を形成 

 前述したペプチド結合が銅イオン(Cu2+)に配位する。『銅イオンは色を出すから錯イオンかな?』と考える。上記の場合は、錯イオンでは大きすぎるので錯体と記述した。錯体を形成したということが、紫色を呈するということである。ただし、紫色を呈するためには条件がある。何でも良いというわけではない。実は、トリペプチド以上であることが必要である。分子間の距離が一般的な間隔であるなら何でも良いのだが、要はこの間隔が短い時どうするのか?ビウレット反応は3両編成以上なのである。”トリ(tri)”とは3のことなので、アミノ酸3個分以上ということである。なぜ、3個なのか?と考えたヒトは下記の図をご覧いただきたい。

 銅イオン、例えばテトラアンミン銅イオンの色は濃青色、形は正方形であった、ということで4つアンモニウムイオンが配位している。
 上図の●はアミノ酸、は窒素である事を示す。ペプチド結合といえども窒素の処が配位する。だから、矢印は結合のつもりで見ていただきたい。この事から、結合が2つ連続するためにはアミノ酸が3つ連続していなければならない。つまり、3両編成の電車のようでなければならないとイメージする。
 『なぜ、左側が繋がらなければならないのか?また、右側が繋がらなければならないのか?繋がる必要がないのではないのか?』と疑問に思うかもしれない。ペプチド結合はこのようにできているので仕方がない。
 これはキレートと呼び、実はイオンを挟んでいる。つまり、カニの右手、左手とイメージして欲しい。これの由来はカニの手である。

 1分子で2配位なのである。アンモニアはとても小さいので4つ配位できるが、本来、天然に存在するモノは分子量が大きいので本来は2つずつ配位するのがほとんど。4配位とは言っても2分子なのである。どうしても繋がらなければならないので結合は1個あればよいと言うわけではない。だから、”トリ”、ペプチド結合をするアミノ酸が3つ以上ないとダメ。

 なぜ、水酸化ナトリウムを加えるのか?
 説明のために例題をあげる。

 ex) アセトアニリドはHClに溶解する
 これは、○か×か?
 アニリンは塩酸に溶ける。そして、アセトアニリドも溶ける。この場合、アミノ基は酢酸と結合しているが、塩酸に溶ける。

 例えば窒素を見る!
 アミド結合の窒素にはまだ、非共有電子対が残っている。従って、この非共有電子対にはH+が配位できる。だから、H+がついてイオン化する。
 意外かもしれないが私立系の入試でこの事をよく出題してくる。

 ペプチド結合が配位すると述べたが、勿論、窒素に非共有電子対がある。これを使って銅イオンに配位する。この時、H+があると、非常に都合が悪い。何故かと言うと、非共有電子対にH+が配位してしまう。すると、銅イオン(Cu2+)に順番が回ってこない。このようになってしまっては銅に配位できなくて困るので、H+を前もってアルカリでつぶしておく必要がある。

(3)ニンヒドリン反応

 これはニンヒドリン試薬を加える。ニンヒドリンは有機物だが構造を覚える必要はない。

 ニンヒドリン試薬 → ☆☆☆

 ニンヒドリン試薬を加えると紫色になると言うだけの単純な反応である。

 ☆アミノ酸でもOK!

 つまり、条件は全くない。タンパク質、ペプチド、アミノ酸でもニンヒドリン反応を起こすわけで適応範囲がとても広いというimageがあればよい。

 鉄則

 ニンヒドリン反応は条件が特にないので適応範囲はとても広い

(4)硫黄反応(Sの検出)

 SCH2CH(NH2)COOH
 |
 SCH2CH(NH2)COOH
 シスチン

 上記にシスチンを記しているが、アミノ酸の部分(−CH(NH2)COOH)が2つ書いてある。これは2分子重合した形を記した。
 『あれっ?』と思わないで欲しい。これは2つ重合した形である。大学で生化学を学ぶようになると分かるが、シスチンには酸化型と還元型があり、上記では酸化型を記した。シスチンは硫黄(S)を分子内に持っている。当然の事として、アミノ酸には硫黄を含んだもの(=含硫アミノ酸)もある、と言うことを認識しておいて欲しい。

タンパク質

NaOH 加熱
NH3
→ (酸性) → H2S
 (CH3COO)2Pbに通じる
→  PbS↓ (黒)

 タンパク質はアルカリに弱い。酸よりもアルカリの方が圧倒的に加水分解する力が強い。
 「昔々、イタリアのセッケン工場である工員の男がいなくなってしまった。そこで、工場の人を総動員して捜索したらセッケンを作るアルカリの入った釜(←セッケンはアルカリ油脂から作る)からいなくなった人と同じくらいの大きさの白骨死体が発見された。」この噺のように、アルカリはタンパク質や油脂を加水分解する力が非常に強い。タンパク質をアミノ酸に分解するレベルではなく、アミノ酸までも分解してしまう。
 タンパク質に水酸化ナトリウムを加えて加熱すると、アンモニアを発生する。なぜなら、アミノ酸まで分解されるからだ。アミノ酸には窒素が含まれているのでアルカリで加水分解した場合には必ず、アンモニアが発生する。
 そして、このあと酸性にすると硫化水素が発生する。直接加えても良いのだが一旦、硫化水素にしてから酢酸鉛に通じる。「酢酸」は無視して良い。酢酸イオン(CH3COO-)は基本的に沈殿を作らないから鉛(Pb)だけに注目すればよい。鉛と硫化水素だから黒い沈殿ではないか!鉛イオン(Pb2+)で黒い沈殿。黒と言えば硫化物なのでPbSと、言うことで硫黄が含まれていることに気づく。一般的にタンパク質には硫黄が含まれているのでタンパク質を完全に壊してしまってSが入っているというレベルの話。だから、(4)はかなり野蛮なレベルでメインは(1)、(2)、(3)である。

6.酵素(emzyme) ← 触媒

 酵素の働きは触媒である。酵素はタンパク質なのでキサントプロテイン反応を起こす。酵素はアクマでもタンパク質と言うことは、タンパク質の基本反応は全て起こす。更に・・・、というところが酵素なのだ。
 酵素は体内では触媒作用を起こす。我々の体内では実に様々な化学反応が起こっているが、酵素が体内で触媒として働いているからそれらの反応が起こるのである。酵素の特徴は下記の3点である。

(1)至適温度
(2)至適pH
(3)基質特異性

 至適温度
 例えば、風邪を引いたりすると体温が低下して酵素活性が下がる。このように至適温度からズレると酵素活性が下がり免疫力の低下をまねくということで当然と考える。
 至適pH
 人間の体液のpHは約7.4くらいでたいていの酵素はそのpHでよく働くようにできている。ただし、例外があって胃液中のペプシンならばpH=2、膵液中のトリプシンならばpH=8〜9ぐらいであるようにそれぞれ酵素によって適切なpHというモノがある。酵素を使う実験では途中でpHが変化すると困るので必ず緩衝溶液を用いる。
 基質特異性
 例えば、マルターゼはマルトースを分解するためだけに生まれてきた酵素である。このように酵素とはある特定の物質(=基質)だけに働くので酵素は基質の種類と同じだけ何万種類とある。当然、酵素と基質は1:1対応で、これを基質特異性という。もし、このようになっていなければ万能酵素というのが1個あればすべて生体内の反応はできてしまうが、実際にはそのようなことはない。だから、何万種類も酵素が存在する必要があるのだ。

 − コラム −    

 基質特異性のお話

 酵素が作用する物質を基質と言い、酵素はそれぞれ基質との結合部(=活性部位)が決まっていて、結合部の構造と合致する基質にしか働かない。これは鍵と錠の関係に似ており、『鍵と鍵穴の関係』に例えられる。


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