デンプンとセルロースについて


1.多糖類 (C6H10O5)n

 これはブドウ糖がたくさんくっついたモノ。つまり、たくさん脱水結合をする。そうすると、1つの単位を見ると上図のように右側がへこんでいる。まん丸だと互いにbattingしてしまう。単糖類を少しへこませてくっつけると多糖類の一つのunitになる。当然ながら式量は162になる。このように糖類を数字で把握できるようになると計算が楽になる。

 式量

 180 - 18 = 162

 α−ブドウ糖 −縮重合→ デンプン

 β−ブドウ糖 ー縮重合→ セルロース

 そろそろ、縮重合という言葉を覚えておきたい。縮重合とは、脱水結合をしてズラッと繋がることを言う。つまり、脱水結合により分子中から水が取れた分だけ縮むのである。
 ブドウ糖にはα−ブドウ糖とβ−ブドウ糖がある。
 例えば、ヤギや羊が草だけを食べて生きていくことができる。しかし、人間は草だけを食べても繊維質を摂取する事ができても栄養が取れないので生きられない。これは、ヤギや羊等の草食動物は繊維(=セルロース)を分解する酵素を持っているのでブドウ糖を得られることに由来する。ちなみに、ブドウ糖は地球上のあらゆる生物においてエネルギー源となる。

1−1.デンプン(← α−ブドウ糖)

 デンプンはα−ブドウ糖がズラッと繋がっているとか、脱水結合だとか上記で述べたがハッキリ言うと下記の通りである。

 つまり、水酸基を使って脱水結合をする。上記のように水酸基2つから水1分子が取れる様式で結合する。上記の式の右辺を見てエーテル結合と考えてはならない。これはグリコシド結合である。
 グリコシド結合をエーテル結合と答えるのは、非常にマズい。何故かとピンと今は来ないだろう。これは下記で説明する。

  1位4位 → 直鎖
  1位6位 → 枝分かれ

1位と4位というのはブドウ糖分子の1番目と4番目の炭素に結合している水酸基を使って結合すると言うこと。どこでも結合できるというわけではない。1番と4番の水酸基を使って結合していく。これが基本構造である。ブドウ糖分子が基本構造で結合に使う手は2本ある。皆で手が2本あるから”ズラッと繋がりましょう”と言うことである。そこへ、ボクも入れてと言わんばかりにブドウ糖がやってくる。ブドウ糖は結合の手が何故か3本ある。手が3本あると言うことはそこから枝分かれできると言うこと。
 基本は1番の水酸基4番の水酸基を使うのだが、中には更に6番の水酸基も使う輩がいる。すると、そこから枝分かれをする。
 直鎖にしろ枝分かれにしろ1位の水酸基が絡んでいることに注目して欲しい。つまり、1番の水酸基はヘミアセタール結合という非常に特殊で結合の切れやすい化合物のあるところである。上記の式の右辺の結合がエーテル結合であるならば容易に切れて還元性を示したりはしない。このように、必ず1番の水酸基という切れやすいところが絡んでいるから消化ができるのである。そうでないのなら、我々はエーテルを飲んで生きてくことができるという事になってしまう。だが、実際にはそのようなことはない。上記の式の右辺の結合は消化して加水分解できるのだから必ず特殊な1番が絡んでくる。

アミロース(枝分かれなし)  
温水に溶ける
デンプン
アミロペクチン(枝分かれが多い)  
温水に不溶

 ※ はI2を加えたときの呈色。

 天然のままのデンプンは性質の異なるアミロースとアミロペクチンという2つの部分からなる。そのうちのアミロースは枝分かれがなく分子全体の10〜20%を占め、対してアミロペクチンは枝分かれが多く残りの80〜90%を占める。上記でアミロースは温水に溶けると書いてある。これはデンプンを湯に溶かすことができると言うことである。下記でも述べるがデンプンはアミロースの周囲をアミロペクチンが取り囲むようにミセル(=β−デンプン)を形成している。アミロースのように枝分かれのない構造をしているところは分子中に水酸基が余っていて水分子と水素結合をして水と親和するので水に溶けやすい。対してアミロペクチンのように枝分かれした構造を持つ分子は水酸基が少ししか余っていないので水分子と水素結合をしても水を吸うだけで溶けない。しかし、熱を加えるとミセルの間に水が入り込みミセルが崩れてアミロースの水酸基と水分子が親和してとける。アミロペクチンは著しく膨潤して糊状になるか粘調なコロイド溶液となる。これをデンプンの糊化という(=α−デンプン)。この事が、水には溶けないけども湯には溶けるというデンプンの性質に由来する。

アミロースの構造

アミロペクチンの構造(↑この画像をクリックすると拡大表示されます)

 アミロースはα−ブドウ糖が1位と4位の水酸基で縮重合を繰り返して300〜400個連結したモノである。アミロペクチンはα−ブドウ糖が1位と4位の水酸基のところで約25個縮重合した短い単位が『−O−CH2−』という1位と6位の水酸基でグリコシド結合をして橋状に連結し、幾重にも分岐して全体として螺旋状になった複雑な構造のモノである。これがアミロースの外側を包み込んだ形となっているモノと考えられる。ヨウ素デンプン反応を起こしたとき、アミロースは青く、アミロペクチンは赤く発色する。
 デンプンには分子構造を見て枝分かれのないアミロースと枝分かれの多いアミロペクチンからなることを覚えておいて欲しい。

 鉄則

 ・グリコシド結合はエーテル結合とは全く違う。
 ・グリコシド結合はヘミアセタールがあるから消化できる。
 ・デンプンには2種類の性質がある。

ex)

 デンプン 342g ーアミラーゼ→ 麦芽糖 xg ーマルターゼ→ ブドウ糖 yg

 上記のx,yについて求めよ。

(Ansuwer)

 この問題を見てみると、生物の問題のようにアミラーゼが登場している。アミラーゼというと・・・、血中のアミラーゼ濃度が高いときには膵臓炎を疑う。著しい膵臓炎の場合にはあまり血中のアミラーゼ濃度は関係ない。急性の時に限って血中アミラーゼ濃度の変化が関係する。
 デンプンはアミラーゼによって麦芽糖に分解される。では、マルターゼはどこで分泌されるのか?
 十二指腸から分泌される。酵素の名前はとても単純である。麦芽糖はマルトースと言い、マルトースを分解する酵素がマルターゼなのだ。
 この問題の状況をよく考えてみよう!
 デンプンというのはブドウ糖がズラッとたくさん繋がっている。ちなみに、麦芽糖はブドウ糖2分子が縮重合したモノである。

 だから、ご飯を食べると上図のように2つずつのunitに切っていく。つまり、デンプンは唾液中のマルターゼによって麦芽糖に分解される。なぜ、デンプンを2つずつのunitに切っていくのか?これは全ての生物に言えることだが、菌との兼ね合いによるところである。我々の口の中には非常に多くの菌が生息している。口の中は非常に湿り気があり、温かいので菌にとってはこれほど繁殖に適した環境はない。このようなわけで口の中には常在細菌が多くいる。口の中にいる常在細菌は単糖類をエネルギー源として利用することは出来るが、二糖類はエネルギー源として利用できない。もし、ご飯を口の中に含んだとたんにブドウ糖にまで分解されていたら、口の中の細菌がブドウ糖をドンドン摂取してしまうのでいくら食べてもその人は栄養が取れずに痩せこけてしまう。このように、細菌に栄養を横取りされないためにデンプンが二糖類に分解されただけで口を通過し、体に吸収される直前の空腸に到達した段階でブドウ糖に分解され、細菌に横取りされないウチに吸収するというシステムになっている。
 one unitずつで考える!

 何故、2つ書いたのか?
 麦芽糖が二糖類だからそれぞれ2つ出さなくてはならない。の中の数字は18の倍数なので約分すると18:19:20の割合になる。単糖類の分子量は180、水の分子量18が180の倍数に付いたり取れたりするので18で割り切れないわけがない!
 このようにして、割合によって重さを求めることが出来る。

 x = 342 × 19/18 = 192 = 361 (g)
 y = 342 × 20/18 = 19× 20 = 380 (g)

 鉄則

 ・炭水化物の分子量は必ず18で割れる
 ・炭水化物は割合から重さを求めることができる。

1−2.セルロース

 セルロース分子の構造

 セルロースはβ−ブドウ糖がズラッと繋がっている。大事なところは・・・

 1位4位のみ → 枝分かれなし

 これは6位とかは結合しない。つまり、セルロースは枝分かれがない。詳しい話は次の章で述べていく。

 

2.デンプンとセルロースの構造的の違い

 デンプンのところで説明していないことをここでは説明する。

デンプン 枝分かれあり 螺旋状構造
セルロース 枝分かれなし 直線構造

 αーブドウ糖

 デンプンには枝分かれのある部分と枝分かれのない部分があるが、totalとして考えれば枝分かれがあると考えられる。対して、セルロースは1位4位の結合しかないので、枝分かれは全くない。これが、構造的な違いの1つである。
 デンプンは螺旋構造をしているのに対し、セルロースは直線構造をしている。しかし、いきなりこのようなことを言われても分かるわけがない。
 α−ブドウ糖は1位と4位の水酸基が繋がるのだが、両方とも水酸基が下を向いている。だから、ブドウ糖が繋がるときに、どちらか一方のブドウ糖は傾いた状態で繋がらなければならなくなる。この状態が繰り返し行われるとついには螺旋状になる。

 βーブドウ糖

 対して、β−ブドウ糖は1位4位で繋がるが、水酸基が上下対象なのでいくら繋がっても直線形である。

 デンプン


→ ヨウ素デンプン反応(青紫色)
加熱すると消えるが、冷やすと再び呈色

 デンプンの螺旋構造の中にヨウ素分子が入り込む。この時に紫色になる。これがヨウ素デンプン反応で、デンプンにヨウ素液を加えると青紫色になる理由。ヨウ素デンプン反応を起こしたデンプンを加熱すると、青紫色の呈色は消える。何故かというと、加熱することによって分子運動が激しくなりデンプン分子中に入り込んでいたヨウ素分子が外れる。しかし、冷やすとまたヨウ素分子がデンプンの螺旋の中に入り込んで再び紫色を呈する。これに対して、タンパク質は非常にデリケートなのである。例えば、肉を焼いたとする。その肉を冷やしたからと言って元の生肉の状態に戻ったりはしない。だからこそ、冷しゃぶが出来る。これは、タンパク質が熱を加えられたことによって変性を起こすからである。タンパク質と比較しても分かるようにデンプンはかなりずぼらで頑丈なのである。ヨウ素デンプン反応を起こしたデンプンを温めて色を消し、冷やすと再び呈色するというのは構造が壊れないから出来るのである。

2−1.セルロースが多数の水酸基を持つ理由

 まず、有機物が水に溶けるとはどういう事かを考えてみよう。
 例えばイオン化する以外には水と水素結合を作る。だからアルコールはよく水に溶ける。勿論、水素結合が重要なのだが、この場合は分子間水素結合である。

 

 上図では、セルロースの分子が5本ある。そうすると、水酸基を使ってセルロース同士が結合してしまう。上図の横線はセルロース分子、青色の縦線は水素結合を表している。

 分子が直線構造をしており、分子間に多数の水素結合を形成するため

 分子間水素結合と言えども数が少なければ、強くはない。分子間水素結合はガッチリしている。つまり、『多数の』と言うことをここでは言いたい。たくさん出来るためには分子が直線構造をしていることがGood。まず、直線構造をしていると言うことが考えられるようになって貰いたい。単に構造が違うからではなく、直線構造をしているからそれだけ接触面積も広くなり分子間の水素結合をたくさん作れる。

 ☆ セルロース

 (C6H10O5)n
 → [C6H7O2(OH)3n

 セルロースというのは枝分かれがないので2番、3番、6番の3つのfreeな水酸基がある。1番と4番の水酸基は結合しているのでふさがっている。だから、水酸基3つ出しておいてあとは残りとすると、セルロースの示成式が書ける。
 セルロース自体は硝酸でエステル化するとトリニトロセルロース([C6H7(ONO2)3]n)になる。

[C6H7O2(OH)3]n + 3n HNO3 → [C6H7(ONO2)3]n + 3n H2O

上記の反応では濃硫酸が脱水剤として働き、セルロース分子中の水酸基と硝酸分子から水分子がとれて、トリニトロセルロースと呼ばれるセルロースの硝酸エステルを生じる。 上記の反応式のように水酸基が全てエステル化されたモノをトリニトロセルロース(=三硝酸エステル)と言う。トリニトロセルロースは別名:綿火薬と言い爆発性が大きい(発火温度:約270℃)ので無煙性火薬に用いられる。ここで注意するのは、硝酸のNが有機化合物のCと直接くっついているわけではないのでニトロ化ではなくエステル化である。

 セルロースの水酸基の2/3がエステル化されたモノをピロキシリン([C6H7(OH)(ONO2)2]n)と言う。これにショウノウとアルコールを混和し、顔料を混ぜて加熱したモノがセルロイドである。かつては成形し易いため、玩具や文具、日用品に広く用いられていたが、引火性が大きいために現在ではプラスチックなどの合成樹脂にとってかわられた。
 エステル化の別にもう一つ挙げておく。トリニトロセルロースの場合と同様にセルロースの水酸基に酢酸をdockingさせてエステル結合させるとトリアセチルセルロース([C6H7(OCOCH3)3]n)になる。

[C6H7O2(OH)3]n + 3n (CH3CO)2O →
[C6H7(OCOCH3)3]n + n CH3COOH

 このままだと、カチンカチンの状態なので一部加水分解して少し切り離して実用化してフィルムケースなどに使ったりするのだがそのようなことはどうでもよい。まず、示成式が書けると言うことが重要である。
 では、アセチルセルロースの式量を計算しよう!
 セルロースの式量が162。酢酸の式量が60。アセチル化で酢酸が3つつく。エステル結合でこの場合水が3つ取れる。

 162 + 60 × 3 − 18 × 3 = 288 (式量)

 このくらいの計算なら、私立大学の入試でも出題される。数値としてはとても優しいので数値計算でモタモタしないように気を付けて欲しい!

 − コラム −    

 なぜ、筋肉痛になるのか

 我々の肉体は運動すると筋肉にエネルギーを供給するために、筋肉中に蓄えられているグリコーゲンをブドウ糖へ変換し、それを酸化分解する。そのためにはたくさんの酸素が血流によって運ばれてくる必要があるが、血管は急激な血流量の増大に対応できるだけの太さはないので、結果的に筋肉に酸素が行き渡らなくなる。
 酸素が行き渡らなくなるとどうなるのか?
 動物の筋肉などで酸素が行き渡らないから、と言って全く動けなくなると言うのは非常に困る。実際には、筋肉への酸素供給が少ないときにはブドウ糖やグリコーゲンが無機的に分解されてATP(=エネルギー)が得られる。これを嫌気性解糖と呼ぶ。これはブドウ糖の不完全な酸化分解なので非常に効率は悪いが、ある程度酸素がない状態でも無理矢理グリコーゲンを分解して活動に必要なエネルギーを得る事ができる。

 

 C6H12O6 → 2C3H6O3+47Kcal

 嫌気性解糖は上記の反応式のように不完全なブドウ糖の酸化分解なので二酸化炭素と水にまで分解されずに乳酸まで分解したところで分解が止まってしまう。このような事が繰り返されることで乳酸(C3H6O3)が筋肉中に蓄積して筋肉疲労や筋肉痛が起こる。当然、酸素が十分に筋肉に行き渡っていれば下記の式のように二酸化炭素と水に分解されてエネルギーを得ているのである(=好気性解糖)。

 C6H12O6 + 6O2 + 6H2O → 6CO2 + 12H2O + 688Kcal

 乳酸が筋肉中に蓄積しても酸素が十分に供給されるようになると乳酸の1/5は酸素呼吸の経路に入り、二酸化炭素と水に分解される。また、その残りは再びグリコーゲンに合成されてエネルギー源として利用される。
 これらのことから筋肉痛になったら、温かい風呂に入ってマッサージするとか無理に動かして血流を増やせばよい。そうすることによって乳酸がすぐに分解されたりグリコーゲンに再合成されることは実際にはないのだが、血流に乗って筋肉中から乳酸が運び去られると筋肉痛が緩和され、やがて乳酸の分解やグリコーゲンへの再合成がなされる。
 嫌気性解糖の反応経路は乳酸菌によりブドウ糖が乳酸に分解される乳酸発酵と同じである。乳酸菌と言えば乳酸菌飲料のヤクルトが非常に有名である。このことから、人間だって多少ガンバレば体内でヤクルト(・・・のようなもの!?)を作ることだって可能なのである。


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